本研究は慰安婦問題における和解諸政策(裁判、真相究明、補償、謝罪、記念碑)が、和解に作用反作用した経緯を解明した。裁判はその手続き厳格さゆえの原告救済困難性と同時に被害事実認定の信ぴょう性を持つ。真相究明は、曲解単純化した事実が記念碑などを通じ拡散して和解に反するのみならず、個人責任の所在特定はできない。被害者が被害事実と加害責任の認定に基づく尊厳の回復を求めていることに鑑みれば、真相究明における加害被害の区別の不明瞭さは、被害者側の反発を招く。それは原理化された活動団体や記憶のありようにより悪化する。しかし、和解諸政策はその相互作用を通じて、長期的には加害者側と被害者側の共通理解も広げる。
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