2018年での研究計画の進捗状況に変更があり、2019年度に基金の残額を廻して主に本研究に関わる理論的な考察を中心に行い、この調査を海外のASEAN研究者との討議に費やした。ASEANが進めている共同体構築の中で人権協力と人権保護は全ても加盟国で均等に実践されているわけではなく、政治体制の相違を超えた協力の視点を国際関係論や隣接する学問分野かrの視座を援用しつつ考察を行った。人権や民主主義、法の支配などASEANにとっての新しい価値観がある一方で、これまでのASEANを構築してきたASEAウェイとの共存関係を弁証法的視点から見ていくと体制の相違を担保しつつ、この分野での共存関係をより理解できることに着目し、この理解を助けるために以下の理論的アプローチからこの問題に接近した。文化変容、言辞的関与(レトリカルエンゲージメント)、そしてプラグマティズムである。現在はまだ研究の進行中であり、引き続き考察を行っている段階である。 海外調査も時間をみて行った。渡航が禁止されている研究対象国もあり、上述の調査に合わせて難民や人権支援団体の代表者と聞き取り調査を行い、ミャンマーにおける少数民族の問題、ラカイン州のロヒンギャ、カチン州、カレン州における迫害など独自のネットワークを持つこうした団体から情報を得ることができた。現実の人権侵害が起きている場に海外からの研究者へのアクセスが十分ではない場合、こうした複数のNGOと知己を得ておくことはこの問題の今後を調査していく上で重要な拠点となり得る。
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