1年目(H28年度)は理論的考察と先行研究収集を、2年目(H29年度)はタイやラオスでメコン広域開発の実態にかんする資料収集、現状調査を、3年目(H30年度)はメコン広域開発をめぐる当事者間の認識の相違を踏まえ関係国や関係機関が協力のための会議を制度化してきた経緯の調査を行った。それらの成果は、2018年9月に英国日本学会(シェフィールド)や、2019年6月にCambodian Institute for Cooperation and Peace(CICP)主催ワークショップ(2020年2月にはJournal of Greater Mekong Studies Vol.2 に論考を掲載)、同年7月のAssociation of Asian Studiesで報告した。これらの経験を通じ、研究者や実務者によるメコン開発国際的ネットワークに注目し、2020年、2021年に国際ネットワークの参与観察を行うことを目指して研究を延長した。 2022年には、主に2つの事業を行った。ひとつは2022年9月13日に、これまでの研究成果をアジア経済研究所の夏期講座という形で一般に公開した。もうひとつはタイを中心に形成されたメコン川流域開発をめぐる実務者や地元住民、NGOによるネットワークへの参与観察を行うべく、2023年2月にタイでワークショップを実施した。ワークショップではこれまでの研究成果を報告し、研究者と実務者の国際的なメコン水資源管理に向けた水文データベース構築のための対話を行った。一連の事業を通じ、メコン川流域地域の開発協力は、中央政府と国際援助機関による大規模運輸・エネルギーインフラ開発を中心としていた時期から、地元住民や市民社会組織や識者も参加する形で、その関係者の輪を広げつつあることを確認し、国際的な多元的開発ガバナンスのための制度が形成されるプロセスを検証することができた。
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