研究課題/領域番号 |
16K03546
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
中村 勝克 福島大学, 経済経営学類, 教授 (00333998)
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研究分担者 |
中村 英樹 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (00272097)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生産工程の機械化 / 熟練労働と非熟練労働 / 労働と機械の代替・補完関係 |
研究実績の概要 |
2種類の労働タイプを想定した生産工程モデルを開発し,資本の蓄積が成されたときの(つまり,経済が発展してきたときの)労働需要および賃金への影響を確認した.今回のモデルでは, 〇 熟練労働(skilled labor):生産の管理・マネージメントやシステムのオペレート等を行うホワイトカラーをイメージ. 〇 非熟練労働(unskilled labor):比較的単純な作業を行うブルーカラーをイメージ. という2つの労働者タイプを明示的に扱う.前者の労働は,人工頭脳(AI)も含めたICT等の進歩から(例えば,管理職やオペレータ等が担っていた専門的な仕事の一部が,自動化・単純化されるといった意味で)ネガティブな影響を受ける.他方,後者は,彼らの担っている手動的な労働サービスが,管理者・オペレーター等(熟練労働者)も含めた生産システムによって置き換わる際に,ネガティブな影響を大きく受ける.言い換えると,熟練労働(skilled labor)はICTやAI等の高度機械化に対して代替的であり,非熟練労働は,生産ラインの自動化等に象徴されるような低度機械化に代替的と考える. このような設定を用いた分析により,例えば,非熟練労働に対する費用の上昇(非熟練労働の賃金の上昇)が生産工程の自動化という低度機械化を促し,物理的システム本体だけでなく,それをオペレートする熟練労働に対する需要も持ち上げること(いわば熟練労働と機械の補完性)が確認できた.また反対に,熟練労働に対する費用の上昇(熟練労働の賃金の上昇)は,その費用を抑えるために,熟練労働と代替的である高度機械化を進める一方,生産工程の自動化の費用の上昇を通して,非熟練労働の需要を高めることも理論的に示せた. その他,今回開発したモデルを用いることによって,機械化の様々なフェーズおよびその変化を示すことに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度(平成28年度)の目標の1つとして「基本モデル(生産サイドのモデル)の構築」があったが,この目標については,基本モデルの骨格がほぼ完成したという意味で,一定程度の達成を認めることができる.ただ現在,様々な研究会でのコメントやレフェリーコメントを受け,基本モデルに関しても修正した方が良い箇所が数点出てきている.そのため,完全に計画通りであったと見做すことはできない. また実証分析の準備に関しては,分析方法に関するアイデアが十分に具体化されてきているとは言えず,実証パートの進捗は,むしろ若干ながら遅れている. 以上から,「(2)おおむね順調に進展している。」が適当と判断する.
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成28年度)の成果である「基本モデル」を拡張することになるが,第2年度(平成29年度)の具体的な目標は,「所得格差と教育水準の多様性」のモデル化である.特に,親の所得水準と子の教育水準の関係を描写する教育投資関数に注目し,基本モデルの拡張に耐え得るような関数の定式化を目指す. 第3年度(平成30年度)に予定している理論モデルのまとめにおいて,教育投資関数の与え方は,モデルから総合的な結論が明確に出るか否かのカギの1つとなる.また,この定式化の成否についての予断は,他の部分以上に許されない.そこで,もしも基本モデルの拡張に耐え得る形での定式化に失敗した場合,このパートに関しては部分均衡分析のフレームワークに落とすなどして対応したい.その場合,第3年度の理論モデルのまとめ方について一定の修正を与えることにする. 実証パートに関しては,初年度に不十分だった準備を補いつつ,当初の方針にしたがって,プロトタイプとなる実証モデルの構築を目標とする.
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