高度な機械技術によって,労働はどこまで代替されてしまうのか.近年,様々な議論が成されてきているが,経済成長論の分野においても,この問題に関連してTask-basedモデルが用いられてきている.Task-basedモデル自体は,Acemoglu and Restrepo(2018)によって広く知られるようになったが,その原型的モデルはZeira(1997)やNakamura and Nakamura(2008),中村(2010),Nakamura(2010)によって,既に使用されてきている. Task-basedモデルの最大の特徴は,マクロ生産関数の中にタスク(もしくは生産ステップ)という概念を導入,各企業の行っている「技術選択」を,タスク・タイプの選択といった形で表現できるようにした点にある.このことは,これまで漠然としか描けなかった機械技術による労働の代替(機械化,オートメーション化)という現象を,タスク・タイプの変更という具体的なイメージによって捉えられることを可能にしている. 本研究では,基本的なTask-basedモデルに,技術労働(skilled labor)と単純労働(unskilled labor)といった2種類の労働を導入,2部門Task-basedモデルとして分析を行った.その結果,数学上,一般的に分析が困難とされる2部門成長モデルの均斉成長経路(Balanced Growth Path;BGP)の存在を示し,機械化とそれぞれの労働に対する分配率の長期的状態を描写することに成功した.
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