令和元年度は、ジョブローテーションとジョブ特化のどちらが企業の利潤上望ましいのかという問いに答えるために、引き続きモデルの拡張作業を行った。28年度に、世代間重複構造のない基本モデルをジョブが将来消滅することはない確実性下の世代間重複モデルに拡張し、29年度から令和元年度に、それを将来ジョブが消滅する可能性を導入した不確実性下の世代間重複モデルにさらに拡張した。 不確実性下の世代間重複モデルへの拡張作業が終了した時点で、論文構成を、基本モデル、確実性下の世代間重複モデル、不確実性下の世代間重複モデルの三つのモデルから成る構成から、基本モデルと不確実性下の世代間重複モデルの二つのモデルから成る構成に変えることにした。この構成変更に伴い、必要な修正作業を行った。さらに、海外の研究者から有益なコメントをいただく機会があり、そのコメントに基づく修正作業も行った。 現在、論文の全体点検・最終仕上げ中であり、完成後に英文校正をした上で、本研究の成果・とりまとめとして査読付き海外ジャーナルに投稿する。 本研究の付加価値は以下の通りである。 (1) Ortega (2001) とは代替的で経験的観測と整合的な、ジョブローテーションに関する企業モデルを提唱する。 (2) 金銭的授受を明示的に考慮した動学マッチング・モデルを文献上初めて導入する。 (3) 日本型とアメリカ型の雇用システムを統一的に説明できる企業モデルを構築する。 (4) 終身雇用と年功賃金がセットであるべき一つの理論的根拠を与える。
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