研究課題/領域番号 |
16K03549
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千葉 早織 京都大学, 経済学研究科, 講師 (50770880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報伝達 / 2次元利益相反 / 相関関係 / アウトサイドオプション / アクションバイアス / パンダリング |
研究実績の概要 |
基本モデルの分析については、研究代表者による予備的分析対象である不完全情報の離散のアウトサイドオプション付きチープトークモデルを展開した。結果、異なるアクションのペイオフの間に負相関があると、各次元(アクションバイアスとパンダリング)の利益相反と情報伝達の間に非単調な関係が現れることを見出した。アクションのペイオフ間の相関は、既存研究でも分析されておらず、なぜ既存研究において、各次元の利益相反と情報伝達の非単調関係が明示されなかった理由を示唆している。 応用問題については、権限の委譲について分析を進めた。具体的には、離散のアウトサイドオプション付きチープトークモデルをベースに、意思決定者が専門家に決定権限を委譲する(全委譲)、意思決定者が専門家が選択するアクションを応諾か拒否する(半委譲)、或は、意思決定者は権限委譲は一切せずに専門家から情報を聴取するのみ(非委譲)の三体制を比較した。アクションバイアスが大きい程、最適な権限委譲の程度は低くなる、という既存研究とは異なる結果を得た。 これらの基本モデル分析や応用問題分析の結果を、原稿としてまとめ、研究代表者の個人Websiteに掲載したり、国内外の研究学会や研究機関(2016 Asian Meeting of the Econometric Society、2016 Australasia Meeting of the Econometric Society、UECE Lisbon Meetings in Game Theory and Applications 2016、10th Japan-Taiwan-Hong-Kong Contract Theory Conference、 日本経済学会春季・秋季大会、第22回DCカンファレンス、一橋大)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステートとアクションのスペースが離散のモデルを展開し、異なるアクションのペイオフの間に負相関があると、各次元の利益相反と情報伝達の間に非単調な関係が現れることを見出した。 研究代表者による予備的研究対象のUniform quadraticモデルで見られた結果(各次元の利益相反と情報伝達の間に非単調な関係)の頑健性を確認すべく、室内実験(laboratory experiment)の準備をしている。研究代表者は、実験内容をデザインし、海外の共同研究者に実施を分担している。 然し乍ら、汎用性の高い数式モデルの構築には至っていない。伴って、各次元の利益相反と情報伝達の間に非単調な関係が現れる必要十分条件も分析できてはいない。 一方、応用分析については、進んでおり、最適な権限委譲についてモデルを構築・分析し、研究学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
現在準備中の室内実験を実施し、その結果を分析する。 同時に、汎用性の高い一般化モデルの構築を行い、そのモデルの分析を行う。 加えて、決定権限の委譲、専門家の選任、専門家の情報開示などの応用問題について分析し、当該分析の結果と、既存の研究結果と比較検証する。 平成28 年度同様、研究協力者とインターネット上で、研究の成果について報告し合い、加えて、海外の研究協力者や国内外の専門家を訪問し、集中的に研究を進める。適宜、研究成果を取り纏め、国内外の研究学会や研究機関で発表する。取り纏めた成果を、ワーキングペーパーとして発表、或いは国際的に評価の高い査読付き学術雑誌に投稿する。
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