最終年度にあたる今年度は、これまで行なってきた銀行間ネットワークのデータ解析やそのための手法開発についての論文が海外査読誌に複数採択された。具体的には、日次および日中の時間頻度で同時に取引パターンを抽出するためのテンソル分解法の論文が科学誌Sientific Reportsに採択され、銀行間市場におけるリレーションシップ・レンディング(多期間にわたる継続的な二者間の取引)を抽出する手法を開発し、それを実際にイタリア銀行間データに適用した論文が経済学系雑誌Journal of Banking & Finance に掲載された。また、それを社会ネットワークも含めて適用し、この手法から得られたいわゆるBackboneの特徴を解析した論文が Nature Communications に掲載されるなど、一連の研究が高い評価を得た。これ以外にも、イタリア銀行間データを詳細に解析し、これまで知られていなかった動的なパターンを複数発見し、それをモデルによって再現した論文はEPJ Data Science に掲載された。 3年間の研究補助期間の最終年度として、これまで行ってきた国内外の共同研究者との協働が実を結んだと同時に、本研究課題は経済学と物理・ネットワーク科学・コンピュータサイエンスの研究者との文理融合型研究として一定の成果を得ることができたと考える。今後も、研究領域に関わらず様々なアプローチを用いて経済データの分析を継続して行っていく予定である。
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