研究課題/領域番号 |
16K03553
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
渡辺 隆裕 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (70220895)
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研究分担者 |
飯村 卓也 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (50279634)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / マルコフゲーム / ナッシュ均衡 / 優モジュラゲーム / 弱外部性 / 進化均衡 |
研究実績の概要 |
平成29年度は以下の実績を得た. (1)有限の戦略・期間・状態を持つマルコフゲームに対する純粋戦略均衡の存在定理:標記のゲームについて,各状態での成分ゲームが優モジュラゲームであるときに,純粋戦略均衡が存在する十分条件を求めた.過去の研究では,戦略と状態の数が無限である無限期間マルコフゲームに対して同様のゲームにおける存在条件が考察されているが,そこでは優対角条件と呼ばれる条件が課され均衡点が唯一であることが仮定されており,さらには状態と戦略が一次元であることも仮定されていた.本論文では,優対角条件を課さず複数均衡を許し,さらに状態と戦略が多次元であることを許して均衡の存在の十分条件を示した.また応用として,投資により需要が増加する多期間価格競争の寡占モデルに条件を適用して,その均衡の存在条件を導出した.本論文はJORSJの招待論文として掲載された. (2)弱外部性(weak payoff externality,WPE)を持つゲームの純粋戦略均衡の存在定理:Ania(2008)が定義した上記の性質を持つ対称ゲームに関して,対称均衡と対称進化均衡の同一性を示し,有限ゲームにおいては均衡が存在することを証明した.また,その条件を緩めた部分的外部性(partial WPE)について考察し,戦略が無限であるときを含めて,均衡が存在する条件を示した.本論文は現在投稿中である. (3)2人施設配置問題における最適反応ポテンシャル関数の存在証明:標記について昨年度の研究成果が論文として採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度以降の研究計画のうち「(1)定理の具体的な経済モデルへの応用」に関しては,多期間価格競争の寡占モデルについての応用をすることができた.「(2)定理の経済学的な解釈による表現」に関しては,存在条件に「弱外部性」という意味のある解釈を得ることができた.他方で「(3)均衡点を求めるアルゴリズムについての研究」「(4)成果発表」などは順調に推移したとは言い難い. 研究計画書において「研究が当初計画通りではない場合」を考えた時の「既存成果の対称ゲームの成果についての拡張」について大きな発展を遂げており,成果が産まれている.平成30年度は,こちらの方向へ研究を進めるとともに(3)と(4)についても,進展させて行きたい.
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今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況に書いたとおり,当初の研究計画のうち「(3)均衡点を求めるアルゴリズムについての研究」に関しては困難が生じている.そこで当初研究計画にあるように「既存成果の対称ゲームの成果についての拡張」に重点を置き研究を推進する予定である.具体的には以下の研究計画を考えている. (1)オランダの研究者von Mouche氏との施設配置ゲームでの共同研究を発展させ,戦略が2つの時に,対称ゲームを含む抽象化されたゲームのクラスに関する均衡の存在に関して研究を進める. (2)日本大学の丸田利昌氏と,研究代表者渡辺・研究協力者飯村との共同研究を発展させ一対支配戦略可解ゲーム(pairwise solvable game)に関する分析を進める. なお,研究成果の発表に関しても十分ではないことから,本年は論文の投稿を進めるとともに,国内・国外での学会発表も積極的に進めていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が遅れ,研究成果の発表に関して滞ったため,学会や研究会への参加が少なくなった.平成30年度は昨年以上に研究成果の発表に力を入れ,当初予定よりも学会と研究会の参加を増やすことで,計画の遅れを挽回する予定である.
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