本年度は以下の実績を得た. (1)2人対称ゲームに関する一対可解性(pairwise solvable,以下PSゲーム)という性質を定義し,PSゲームに関する研究を実施し成果を得た.研究ではまず,このPSゲームが既に研究してきたWUCゲーム,UCゲームなどのクラスを含み,さらに零和ゲームを含む広いクラスで,レント・シーキングゲーム,2人立地ゲームなど経済学的に応用範囲の広い重要なモデルを含むことを示した.PSゲームは,均衡が可換性(interchangeability)を満たすことを示すことができ,もし均衡が存在すればナッシュの意味での「可解性」を満足すると言える.しかしながら「じゃんけん」がPSゲームであることから分かるように,PSゲームは必ずしも純粋戦略均衡を持つとは限らない.本研究では,利得関数の「対角における準凹性(quasi-concavity at the diagonal)」という条件を定義し,PSゲームがこの条件を満たせば純粋戦略均衡が存在することを示した.この「対角における準凹性」は準凹性を弱めた条件であり,その結果「利得関数が準凹性を満たすPSゲームは,純粋戦略均衡に関して可解である」ということを示すことができた.またこのときゲームは支配可解であるということも示すことができた.本成果は,International journal of Game Theory誌に採択されオンラインで公開されている. (2)本研究課題のこれまでの成果をまとめ,「純粋戦略で可解な対称ゲーム-純粋戦略均衡の存在と交換可能性」というテーマで「2019年度日本OR学会関西支部シンポジウム(ゲーム理論から学ぶ:人類への知見)」において講演を行った.本講演をもとにした論文が,日本オペレーションズ・リサーチ学会機関誌にて,2020年度に公開される予定である.
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