研究課題/領域番号 |
16K03554
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
濱口 泰代 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70399038)
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研究分担者 |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00305525)
五藤 孝秋 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (00774449)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オキシトシン / 医療者 / 信頼ゲーム / 実験経済学 / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本年度は,経済実験をするための準備段階として,ORSEEという被験者募集サイトを立ち上げた.当初,オンラインでの被験者募集は想定していなかったが,十分な研究費が初年度に割り当てられていたので,ほとんどの予算をこのサイトの作成費用に使った.ORSEEは海外の実験経済学の研究者によって広く使用されているソフトウェアで(http://www.orsee.org/web/),実験者が容易に対象としたい被験者集団に対して実験への参加募集を行うことができる.このようなサイトを利用して被験者を募集することは,ランダム・サンプリングを行うために必要であることと,実験に参加してほしい被験者の属性をあらかじめ決めた上で被験者募集ができる点で必要であると判断した. また,次年度にどのような経済実験を実施するかを再検討した.当初の計画では“信頼ゲーム”の実験のみを行う予定であったが,医学部の学生の行動特性の違いを,このゲームだけでは顕著に見つけられない可能性がある.また,信頼ゲームの研究で抽出したと想定されている他人に対する信頼は,単にその被験者のリスク愛好度を示しているとも考えられる.そのために,信頼ゲーム以外に向社会性を計測できる経済実験を探す必要がある.実施すべき経済実験を検討するために,Moblabという経済実験ソフト(https://www.moblab.com/)を使って,研究代表者である濱口の講義中にいくつか模擬実験を行った.現在,その結果を分析して,信頼ゲーム以外に実施するゲームを検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,被検者募集のオンラインサイトを立ち上げるためにほとんどの予算を使ったため,実験をすることができなかった.次年度の予算で経済実験を実施し,研究の遅れを取り戻したい. 被験者募集サイトORSEEの動作確認はすでに行い,今のところ問題はないが,万が一不具合があった場合には,すぐに対応できるように,ORSEEの翻訳を行ったシステムエンジニアと保守契約を行う.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,本年度に立ち上げた被験者募集サイトを活用して実験を実施したい.研究の目標は,医学部の学生の行動特性を経済実験により明らかにすることと,さらにその行動特性に生理学的な裏付けがあるかを調べることである.その目標を達成するために,次年度は,信頼ゲームをはじめとする経済実験を,(A)医学部の学生対象,(B)経済学部あるいは人文社会学部の学生対象,の2集団に対して行い,顕著な行動の違いが発見できるゲームを見つけたい. 既存の研究結果から,信頼ゲーム等の少人数で行われるゲームの方が,大人数で行う市場実験よりも,心理的な影響が顕著に観察されることが分かっている.そのような少人数の実験だけではなく,公共財供給ゲーム等のグループで意思決定をするゲームも視野に入れつつ,実験を実施する. 向社会性の違いによって行動に大きく違いがあらわれるゲームが見つかれば,その実験結果の頑健性を最終年度に確認し,その際,血中ホルモンの計測をするなどして,生理学的な反応の違いについても調べたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は経済実験を行う準備のために,ほとんどの予算を使った.次年度以降に必要な物品等は十分に準備できたが,実験を実施できるほどの予算が余らなかったので,残額は次年度に使用することにした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,経済実験を実施するので,被験者への謝金として使用したい.
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