最終年度において,3年間準備してきた経済実験をようやく実施することができた。具体的には、医学部、経済学部、総合生命理学部、人文社会学部、芸術工学部の学生から200名余の被験者登録を行うことができ、その中から延べ100名程度の被験者に経済実験に参加してもらった。2020年の2月に計画ししていた信頼ゲームの実験を行うことができたが、3月に計画していた最後通牒ゲームの実験は、新型コロナ感染予防のため、実施を計画していた大学から中止の要請があり、実施することができなかった。そのため、計画していたよりも十分な実験データを集めることができなかった。 本研究では,医療職を目指す学生の向社会性に関して,実験経済学の方法を用いて数量的に計測することであった.これまでにも,社会的に異なる集団の行動の違いを比較した研究は,経済学だけではなく他の分野にも多くあるが,本研究では,医療者を目指す学生が,それ以外の学問分野を目指す学生と比べて,すでに向社会性等について,行動規範が異なるのかを調べることであった.内容的には単純な研究であるが,実際に他学部の学生を集めて実験をすることは,事務的な手続きが非常に多かった.しかし,本研究費からORSEEという被験者リクルートシステムを導入することができ,非常に効率的に被験者集めを行うためのインフラを整えることができた.ORSEEは実験経済学の分野で国際的にも認められた被験者リクルートシステムであり,このシステムを用いて被験者をサンプリングしたことは,実験データの信用性を上げるためにも重要であった. 研究分担者の飛田先生および五藤先生と共同研究を進めたことは,経済学以外の観点から人間の情動と行動の関係について知るために大変有益であった.
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