研究課題/領域番号 |
16K03555
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研究機関 | 尾道市立大学 |
研究代表者 |
中谷 武 尾道市立大学, その他部局等, 学長 (40093281)
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研究分担者 |
中村 保 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (00237413)
大住 康之 兵庫県立大学, 国際商経学部, 教授 (10223819)
井本 伸 尾道市立大学, 経済情報学部, 教授 (50369196)
田中 淳平 北九州市立大学, 経済学部, 教授 (60364147)
稲垣 一之 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70508233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 利潤率 / 偏向的技術進歩 / 資本収益率 / 所得分配 / 成長率 / イノベーション |
研究実績の概要 |
トマ・ピケティ『21世紀の資本』(2014)が得た実証結果を説明するピケティ理論には通常の成長理論の想定に反する仮定がある。われわれは中立的技術進歩に換えて偏向的技術進歩を想定することによって、資本と労働の代替の弾力性が1を超えないという通常の想定の下で、ピケティの結果が合理的に説明できることを明らかにした(Adachi等2019))。ピケティの実証結果は資本労働比率や資本収益率、要素分配率の長期的一定性という『定型化された事実』(カレツキ)に反するが、偏向的技術進歩を想定すれば所得分配率、資本労働比率の変化、さらに失業率の上昇や下落を統一的に説明できることが明らかになった。 第二に、所得分配の変動に関わる重要な要因に人口減少、人口移動、人的資本の格差による地域間市場競争がある。人口の地域間移動が失業率や分配率に及ぼす影響について、人的資本を考慮した理論モデルを示した(CHEN and Nakatani,2019)。中国の戸籍制度に代表される移民規制を緩和することは都市部門の賃金を引き下げ、熟練非熟練の賃金格差を増大させるが、都市部門の生産を刺激して社会的厚生は全体として増大する可能性が高いことを示した。 第三に、企業や家計はグローバル化によって厳しい市場競争に直面している。企業の新技術の導入はその技術のタイプに関わらず均衡状態の企業利潤率を引き上げることが理論的に示されている(置塩の定理)。しかしその理論の前提条件には問題がある。本研究では固定資本が存在する資本制経済においていかに市場競争が厳しくとも、継続的な技術進歩の導入、人口の増大があれば資本利潤率は循環運動を示しながら長期的に正の値をとる可能性が高いこと、人口減少経済では逆に実質賃金率が増大し、資本利潤率は低下することを示した。(Nakatani,2019)
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