研究課題/領域番号 |
16K03561
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
戸田 学 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (30217509)
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研究分担者 |
笠島 洋一 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (30583166)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マッチング理論 / 研修医マッチング / 過疎地医療 |
研究実績の概要 |
本年度の研究計画は 1. 最新の研究の精読 2. 国際学会での報告 3. 国内研究者訪問 4. アンケート調査,シミュレーションの開始 である.1 については順調に進展している.2, 3, 4 については未着手の部分が大きい.理由は前年度実績に述べた準備中の論文にある.本論文は安定マッチングにおいて定員を下回る採用しかできない病院に対し補助を与えたり,自らが魅力あるプログラムを開発するなどにより応募者の応募インセンティブが高まることで得られる結果を分析している.本論文は申請書にある2015年の予備的論文の延長線上に位置するが当初の予想とは異なる結果が数多く判明し,これにより研究計画を変更する必要があった.具体的に述べる.マッチできずにいる者に対する評価が改善した際,その者と同じサイドにいる他のすべての者の厚生が改善することがないなら同側単調とよぶ.また逆サイドにいるすべての者の厚生が悪化することがないなら逆側単調とよぶ.当初の予想とは異なり安定マッチングを一意的に選ぶ関数で同側単調あるいは逆側単調を満たすものは存在しない.逆側単調性をどちらかのサイドのみに限るとその逆サイドにとって最適な安定マッチングは逆側単調性を満たしている.また安定マッチングの集合は同側単調でありそれを用いて安定マッチング集合を特徴付けることができる.これらは安定マッチングが同側逆側単調性に関して必ずしも両サイドについて対称的でないことを意味しており真に驚くべきことである.この分野では安定マッチングは両サイドに対称的な性質を満たしているのがほぼ常識であることを思えば非常に意外な結果と言える.よって同側・逆側単調性については理論的に追求すべきことが多く残っている.そこで本年度は理論研究に集中して計画を進める事となった.なおこれまでに得られた結果は2018年度の国際学会で発表することが決定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように同側・逆側単調性に関して理論面で非常に意外ではあるがきわめて興味深い現象が見出されたために本年度は研究計画を変更することになった.当初は前年度で理論研究を完成させて本年度は実態調査などに移行する予定であったが,同側・逆側単調性の持つ理論的な意味が予想よりも深いことが判明し,さらに理論研究を継続する必要が出てきたからである.しかし,これは決して研究が停滞していることではない.むしろ予想以上に理論的にも豊富な内容が得られつつあり,さらに大きな成果につなげようと努力している.
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今後の研究の推進方策 |
現在,同側・逆側単調性について理論研究を深めているが,今のところ明らかになったのは1対1マッチングの場合に限られている.これを1対多マッチングの場合にまで拡張しておかなければ実態調査などへ移行することは難しい.今後は,1対多マッチングへの一般化を目指してさらなる理論研究を継続する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では本年度は理論研究を終えて成果の学会報告,実証的な調査などを行う予定であったが理論面で予想外の結果が得られたため,それについてさらに研究を進める必要が生じたために学会参加費や人件費などが発生しなかったのが主な理由である.
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