本研究は日本の短期・長期地震確率が住宅価格にどのような影響を与えるか、また、プロスペクト理論のもとでの地震確率の住宅価格に対する影響を分析するものである。2018年度にまとまった結果を論文にまとめて国際雑誌に投稿し、2019年度は査読者からの改訂要求レポートに対しての作業を主に行なった。まず審査者が指摘した地震データカタログの完全性について検討を行なった。既存研究によると、信頼できる最も古い地震記録の時期と信頼できる最小の地震規模に関する評価の重要性が議論されていることがわかった。しかし気象庁提供の地震データカタログの作成の信頼性は観測方法や技術的進歩に主眼を置いているので、データの信頼性の解決は本研究の分析範囲を超えており、本研究では信頼できるデータを用いていることを前提とした。次に、分析結果について感度分析の検討を行い、長期地震確率が住宅価格に有意に負の影響を与えること、長期地震確率の影響下で短期地震確率の上昇は基本モデルでは有意な結果を示さないが、プロスペクト理論の確率加重関数を導入すると有意な負の影響を示す結果の頑健性を示した。さらに分析の再現性のために提出するRのスクリプトコードの確認とインストラクションノートの作成が担当研究者により作成された。プロスペクト理論に関する既存研究で示されている逆S字の確率加重関数に対して、本研究では短期地震確率に関する確率加重関数の推定結果はS字を示した。既存研究では1種類のリスクを想定しているのに対して、本研究では長期地震リスクがバックグランドリスクとしてあることが要因であると考察したが、この結果からの含意について、さらに検討中である。近日中に改訂作業を終えて再投稿する予定である。
|