本研究は、近代日本における相互扶助の思想と、そこから具体的に構想された生活改善・地域改善等のための社会運動や事業活動に着目し、それらの歴史的経験が現代の思想状況の形成に如何に寄与しているかを解明することを目的として、平成28年度より研究を進めてきたものである。当初5か年計画であったが、令和2年度から始まった新型コロナウイルス感染拡大による研究計画の変更により、研究期間が令和4年度まで延長された。 しかしながら令和4年度も感染状況の改善が見られなかったため、研究会・学会の対面開催が見送られたこと、および、予定していた現地調査・資料収集を取りやめざるを得なかったこと等により、研究はこれまでに収集した資料・文献等の分析・検討を深める作業を中心に進めた。 そうした中においてではあったが、(1)令和3年6月12・13両日にオンラインで開催された日本経済思想史学会第32回大会において本研究代表者の企画により行われた共通論題・シンポジウム「報徳思想と協同」の成果を発展させるため、同年9月に有志11名により発足させた「報徳研究会」を令和4年度に継続し、研究例会を精力的に開催した。例会ではオンラインにより個別研究の報告・討論を行い、電子メール等も用いて質疑応答を重ねた。 (2)前記の研究会では、まず直近までの先行研究の成果を踏まえたうえで、江戸時代末期に農村再建に活躍した二宮尊徳の「報徳仕法」の実践的意義を原典に即して再検討し、次いで尊徳の後継者・報徳家らにより明治時代以降現代にまで継続する報徳運動の展開を多面的に考察した。 (3)令和5年3月末をもって前記研究会による研究成果をとりまとめ、出版社の協力を得て同年9月(予定)に書籍として公刊する。
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