研究課題/領域番号 |
16K03575
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆 立命館大学, 経済学部, 教授 (50381025)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 資本主義の不安定性 / 資本循環 / 賃金主導型レジーム / 利潤主導型レジーム |
研究実績の概要 |
「A Critique to Sraffa’s Model from the Perspective of Marxian Circuit of Capital」では、マルクスの資本循環論の観点から、スラッファに代表される古典派経済学の経済循環アプローチに対する批判を試みた。古典派経済循環アプローチは、多部門間で生産と流通が生起する商品循環が存続可能な経済の存在を証明した。しかしこのモデルは貨幣が不在であるため、財による財の生産が生起する経済の存在を証明したに過ぎない。これに対し、マルクスの資本循環論は、資本が1部門内部で貨幣・生産手段・商品と姿態を変えながら循環する資本循環のアイディアを提示した(このアイディアは「資本の増殖・変態・循環」で数理的に定式化した)。これによって姿態変換を繰り返しながら価値増殖する資本が存在する経済を分析できるようになった。しかしこれも1部門あるいはマクロモデルと解釈されることが多く、多部門化した場合の経済の存在は証明されてはいないという問題点があった。 「Marx beyond Sraffa: toward the generalized formulation of the circuit of capital in a multisector model」では、多部門間で生産と流通が行われ、かつすべての資本が姿態変換を繰り返しながら価値増殖するような経済の存在を証明した。この証明から明らかになったことは、古典派経済学の経済循環アプローチにおける強い仮定(資本の回転期間がすべての部門で恒等的に1)が、経済が不安定となるレジームの存在をあらかじめ排除しているという点である。これが、古典派が資本主義の不安定性に注意を払わなかった理由である。 「資本の記号学──あるいは『資本論』を再読する意義について」ではマルクス『資本論』の現代的意義を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画上の事項については概ね順調に進展している。2018年度に行う予定であったFoley氏とのコンタクトは、既に2018年2月行った。本年度は2回の海外報告を通じて、領域横断的に改善意見を取り入れることができた。また、研究目的上の事項についても概ね順調に進展している。資本主義が安定的であると主張する古典派経済学が、じつは経済が不安定となる条件をあらかじめ排除する仮定を採用している点が明らかとなった点が本年度の収穫であり、本研究の目指す総合モデルの総合性が確証される結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、2点を推進する。1つ目は、総合モデルを早期に研究成果としてまとめ発表する。そのために、研究会や海外発表など、具体的な改善指針を得るような場に積極的に参加する方策をとる。2つ目は各学派のアイディアをシミュレーション比較を行うことを当初予定としている。しかし、本年度の研究から明らかになったように、学派が暗黙のうちに採用していた仮定を明らかにし、その仮定を表現する関数形を定式化した方が不安定性の条件も明らかにしやすいかもしれない。そこで今後は、資本が時間軸上で分布する関数(分布関数)として、どのような具体的な形状を指定した場合に、どのような結果が生じるか(解が存在するか、存在した場合に安定か)を調べる研究を行う予定である。
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