消費者や企業家とは何か、市場取引とは何かとかいう発題は一種のモデル化を促す。19世紀後半以降の経済学の科学化を支えたこうした典型像は、消費者や企業家のリアルな姿、市場取引が社会福祉に正邪様々な影響をもたらす様相を覆い隠す傾向があった。この側面を初めて浮き彫りにしたことはヴェブレンの経済学再建構想の学術的意義である。また、効率性の概念が伸縮自在だという彼の認識は社会的意義も有している。効率性は金もうけの視点で評価されるか、もの作りの視点で評価されるかでまったく異なる結果を生むことがあり、希少資源や産業技術の共有、合意にもとづいた途上国開発などの今日的主題にも深い洞察を与えるはずだからである。
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