研究実績の概要 |
本研究は、イギリスで1870年から90年にかけて、限界効用理論をはじめとする主体行動分析が、ワルラス的な一般均衡理論のミクロ理論を軸に構築されたという既存の一般的解釈を修正し、少なくともイギリスでは不均衡過程のミクロ的基礎理論として登場してきた可能性があること、ひいては制度設計の視点が存在することを、資料精査と理論評価の両面から明らかにしようとするものである。 2018年度において、”Edgeworth’s formalization of parametric external economies as a germ of a game theoretic view: What was the hard core of the British Marginal Revolution?” Faculty of Economics, Meiji Gakuin University, Discussion paper No.18-01 January, 2019. をまとめた。規模のパラメトリック外部性と呼ばれる、近年使用される生産の収穫逓増下の分析手法が、エッジワースの考案によることを資料に基づき示すと同時に、その意義を考察した。さらに、この英文論文の投稿の準備を進めている。この論文により、1880年代から90年代にかけて、経済環境において収穫逓増を含む可能な生産技術の選択問題が、主体間の行動の相互依存を通じて考察され始めていたことがわかり、収穫逓減の技術環境における市場均衡理論に限定されていないことが判明した。また、ここに市場の制度設計の視点、現代のメカニズムデザインの議論に繋がる視点の萌芽が見られる。 この結果をもとに、エッジワースの不決定性問題が、どの程度制度設計の議論を視野に入れていたかを正確に評価し、エッジワースの極限定理の学説史上の評価を考察している。
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次年度使用額が生じた理由 |
エッジワースの戦争論との関係で明らかになったエッジワースの契約モデルの特性をまとめることに時間がかかり、文献収集のための出張を2019年度に遅らせたため。以下の各地に散在する資料調査に本格的に展開するため支出予定である。1)Edgeworth papers at Nuffiel d College, Oxford 2)Edgeworth papers at the British Library of Political and Economic Science of the London School of Economics Keynes Papers, MarshallianLibrary, Cambridge 3)Wicksell papers, Lund University 4)Foxwell papers, Baker Library, Harvard University. 関西学院大学 5)Harrod papers, 千葉商科大学 6)Golton papers and Peason papers, University
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