研究課題/領域番号 |
16K03583
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
大友 敏明 立教大学, 経済学部, 教授 (90194224)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中央銀行の独立性 / 中央銀行 / 貨幣制度 |
研究実績の概要 |
本年度は、ケインズ学会で「ヘンリー・ソーントンとイングランド銀行の独立性」を報告した。また「デイヴィッド・リカードウと国立銀行の独立性」の論文の作成に着手した。 リカードウの国立銀行の独立性に関する論文の要点は次の点にある。リカードウは、イングランド銀行が政府に従属しているという金融従属説の立場を初期の貨幣論の論集から晩年の『国立銀行設立試案』まで一貫してとってきた。そのため、リカードウにとってイングランド銀行の政府からの独立性という問題はつねに検討課題であった。最終的に、リカードウは、イングランド銀行に代わる国立銀行の設立を提案し、同行に紙幣発行権を負託することを説いた。問題は政府の一部局である国立銀行が独立している根拠とは何かである。リカードウはこの根拠を制度としての独立性と貨幣政策としての独立性の観点から論じた。制度としての独立性は、第1にイングランド銀行の業務を発券業務と銀行業務に2分割したうえで、紙幣発行権を奪い、国立銀行にのみ発券業務を負託したことである。第2に兌換性を復活したことである。リカードウは金兌換を国立銀行の業務としたが、この兌換は国家に対しての債務を意味している。他方で貨幣政策としての独立性は、国立銀行は金融業務をしないので、公開市場操作をつうじて貨幣量を調節する。こうした手段は、利子率政策と政府への割り当て政策で政府への貸付を制限しようと試みたソーントンのイングランド銀行の独立性論を批判しているのである。古典派経済学は金融と財政を分離し貨幣価値を安定させることを目標とした。その意味で、リカードウの国立銀行の独立性の意義は国家が銀行券の債務を負うことで国立銀行の独立性を担保していることを指摘した点にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会報告を行ない、次の論文の作成に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
第1に、リカードウの国立銀行の独立性の論文を完成させる。第2に、ステュアートの論文に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 春季休業中にケンブリッジ大学図書館に出張できなかったため。 (使用計画) 次年度は英文校正と海外での資料収集を行なうための旅費に使用する。
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