本研究は貨幣と国家との関係を考察した。第1は中央銀行の独立性の問題である。1797年のイングランド銀行の兌換停止後に起きた物価騰貴は政府のイングランド銀行からの多額の借り入れが原因であるという批判があった。しかしH.ソーントンは、イングランド銀行は政府から独立しているという金融独立説を説いた。第2はJ.ステュアートの計算貨幣論である。鋳貨は金銀比価や摩耗により度量標準を果たせない。そのため鋳貨から商品性を取り除いた銀行貨幣がその機能を果たす。第3はG.F.クナップの貨幣国定説を批判した福田徳三の貨幣論である。福田は法貨規定よりも税の支払手段としての貨幣を重視し国家による受領性を強調した。
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