研究課題
平成30年度の前期では、本研究で提案したtwo mode regression (TMR) のモデリング手法を用いて日本の商業販売における農畜産物・水産物の卸売販売額(WCS-FAP)や製造業の設備稼働率(CU-MI)などの月次指標と四半期実質国内総生産(GDP)間の動的依存関係を分析し、次のような結果を得た。WCS-FAPとGDPの関係について、拡張期ではWCS-FAPはGDPに3ヶ月ほど、後退期では2年弱先行した変動が目立つ。CU-MIとGDPの関係について、いずれの時期においてもCU-MIはGDPに3ヶ月先行した変動が顕著である。また、CU-MIとGDPについて、拡張期では1980年代より正の相関が徐々に強まっており、後退期ではバブル期に相関が特に強かった。平成30年度の後期では、1991年以降の日経平均株価の日次時系列と日本の景気変動の動的関係を分析した。まず、ベイズ型モデル手法を用いて日経平均株価を、循環変動を伴う長期変動と時変の共分散構造をもつ短期変動に分解し、長期変動の月次平均と景気動向指数(CI)の間に高い正の相関が存在することを確認した。また、日経平均の長期変動にCIとの動的相関関係を導入することによって、両者間の相関関係をより精確に解析し、景気循環に伴って両者間の相関関係も循環していることを解明した。平成28年度では、主に景気指標の構築および原油価格と日本の景気変動の対応関係の実証分析を行った。また、平成29年度はTMRモデリングの手法を提案し、多くの経済指標と実質GDP間の動的依存関係を分析した。上述の結果は、ビッグデータを利用した景気変動予測方法の有効性および、景気変動の時期によって各種経済指標が景気変動の原因にも結果にもなり得ることを示唆する。本研究の提案手法をさらに発展させていくことで景気変動のメカニズムを実証的に説明できる。
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