研究課題/領域番号 |
16K03593
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
山本 庸平 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (80633916)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 動学的因子モデル / 外れ値 / 発散過程 / 構造的ベクトル自己回帰モデル / 政策効果 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、次のような実績を挙げた。 課題A「動学的因子モデルにおけるジャンプなど外れ値の分析への応用」については、動学的因子モデルを用いるにあたり如何に外れ値を修正するかを分析した英語論文1点を一橋大学経済学研究科ディスカッションペーパーとして公表した他、第25回南台湾統計学会、第33回カナダ計量経済学会において口頭発表を行った結果、参加者より大変有益な助言を得た。現在は、国際学術誌に投稿中である。 課題B「構造変化分析への応用」は、大規模な金融資産価格パネル・データを用いてバブルの有無を検定する理論分析の結果を米国における地域別住宅価格に当て嵌めた実証分析に応用したところ、既存の研究結果と大きな違いが出ることが判明した。以上の結果は一橋大学経済学研究科ディスカッションペーパーとして公表し、Japan-Korea Allied Conference in Econometricsで口頭発表し、参加者から大変有益なコメントを得た。現在は、国際学術誌に投稿中である。 課題C「因子の動学プロセスの解明」は日本における地域別データを用いた外的ショックの効果につき、日本語論文1点を書籍の1章として出版した。また、動学的因子モデルを用いた構造的VARモデルの統計的推論についての英語論文1点を一橋大学社会科学高等研究院のワーキングペーパーとして公表、一橋大学社会科学高等研究院サマーインスティテュートおよびスペインのセビリア大学で行われた国際学会で発表し、参加者より大変有益な助言を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題Aは約80%進捗した。具体的には、理論分析およびシミュレーション分析がほぼ完成し、その結果を用いて多国間の為替レートのデータを用いた実証分析を行ったところ、当初予想通りの結果を得た。 課題Bは約40%進捗した。具体的には、動学的因子の発散過程についての理論分析とモンテカルロ実験を並行して進めた。また、ここまでの結果を米国における地域別住宅価格に当て嵌めた実証分析に応用したところ、既存の研究結果と大きな違いが出ることが判明した。 課題Cは約40%進捗した。まず、日本における地域別データを用いた分析を行い、書籍の1章として出版した。また、より詳細な分析につき、年度初めに計画の具体化を進めたところ、金融政策の効果計測のための動学的因子ベクトル自己回帰モデルの区間推定法が必要であることが判明した。そのための理論分析として、データの次元に大きな偏りがない場合についてブートストラップ法が一致性を満たすことを証明し、モンテカルロ実験によりその手法の性質を調べた。
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今後の研究の推進方策 |
課題Aは、当初計画の80%は進捗したと考えるものの、国際学術誌での査読中であるため、その結果に応じて今後の進捗を考える。 課題Bは、ここまでの研究結果を広く国際学会等で発表し、既存研究との違いにつき、理論的なアプローチを中心に関連研究者からの助言を仰ぐ予定である。 課題Cは、データの次元に偏りのある場合の理論分析、実際のデータを用いた実証分析を中心に研究を進捗させる必要がある。それらが完了したところで、広く国際学会等で発表し、関連研究者からの助言を仰ぎたい。また、日本銀行などでの実務経験のある研究者からも意見を汲み取ることでより実用的な研究結果を導くことも課題としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率的に準備を進めた結果、予定より安価な航空券を入手できたこと、また既存の設備で対応可能な範囲で研究を進めたことで、ラップトップPCの購入を来年度に見合わせたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度における学会発表費および物品費として使用する。
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