最終年度である平成30年度には以下の成果を上げた。課題A「動学的因子モデルにおけるジャンプなど外れ値の分析への応用」は、論文「Asymptotic Inference for Common Factor Models in the Presence Jumps」について学術誌審査の3回目の改訂の結果、1名から理論的正当化における齟齬を指摘してもらい、その点の修正が今後の課題となった。一方、より簡素な手法を用いてニュース・ショックの実証分析を行った論文「The Exchange Rate Effects of Macro News after the Global Financial Crisis」が国際学術誌に掲載された。このように、理論的精密さに課題が残ったものの、本課題の実証分析上の重要性は明らかになったといえる。 課題B「構造変化分析への応用」は、論文「Testing for Speculative Bubbles in Large-Dimensional Financial Panel Data Sets」の改訂作業を進捗させた。平成31年2月には国際学術誌から2度目の改訂要求を受け取り、構造変化点の推定につき精査している。このような指摘にみられるように動学的因子モデルにおける構造変化問題はまだ緒に就いたばかりであり、科研期間終了後も分析を継続したい。 課題C「因子の動学プロセスの解明」は、平成30年8月に論文「Identifying Factor-Augmented Vector Autoregression Models via Changes in Shock Variances」を所属大学から公表、5回の国際学会・セミナーで発表し、関連研究者から識別問題につき有益な意見を得た。また、論文「Bootstrap Inference for Impulse Response Functions in Factor-Augmented Vector Autoregressions」が国際学術誌に掲載された。このように研究を進捗させる中で、本課題は昨今マクロ経済分析の中で発展が進んでいる「動学的因果効果の識別」と関連が深いことが明らかになり、引き続きフォローしていく予定である。
|