研究実績の概要 |
今年度は、標本調査法において最も基本的な枠組みである、有限母集団からの非復元単純無作為抽出で得られた標本の、標本中央値の漸近分布について漸近的に正規分布以外の非正則な分布に従う一例を構成し、元山斉「有限母集団からの非復元単純無作為標本において中央値の漸近分布が正規分布以外となる一例」青山経済論集,70(2019) pp.31-37 に発表した。ここで得られた漸近分布は、従来の研究では見られなかった特徴を示しており、今後の研究にもつながる意義のある成果と考えられる。 加えて、先進国と発展途上国を含む広範な国別の長期にわたるパネルデータの分析を行った共同研究の成果の一部を共同報告の形で、日本経済学会の秋季大会(学習院大学目白キャンパス)で、高準亨、元山斉、佐志田晶夫 "Financial Stability, Impossible Trinity, and Macroprudential Policy”で報告を行った。この論文は、現在、査読付きの欧文誌に投稿中である。 また、昨年度に引き続いて、有限母集団からの非復元単純無作為抽出の枠組みでの標本分位点の分布が漸近的に正規分布に収束する速度を評価するための、Berry-Esseen型の不等式の確立について検討を行った。それに加えて、非線形な回帰推定量について漸近正規性の成り立つ正則条件について検討を行った。その結果、従来の独立同一標本の枠組みでの漸近論の正則条件を、一部、有限母集団に合わせて修正した条件の下で、独立同一標本の場合と同様の漸近分布が得られることが確認された。これらの成果については、学会や研究集会等で報告を行ったのち、査読付きの欧文誌に投稿する予定である。
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