研究実績の概要 |
今年度は、標本調査法において最も基本的な枠組みである、有限母集団からの非復元単純無作為抽出で得られた標本の、標本分位点が漸近的に正規分布に近づく速さについて、論文を執筆し、現在、査読付きの欧文学術誌に投稿中である。ここで得られた結果は、正規近似の精度を与え、数理的にも応用的にも意義のある成果と考えられる。これらの成果については、2020年3月の研究会で報告を予定していたが、コロナウイルスの感染拡大防止のため研究会が中止になったことから、現時点、口頭報告の場については検討中である。 加えて、空間点パターンの分類のためのAg-curveについての共同研究について、髙井勉、田村義保、元山斉「新しく提案された空間点パターンのグラフィカルな分類方法であるAGsi-curveの数理的性質」『計算機統計学』 2019年12月, 第31巻2号, 77-99.として査読付き学術雑誌に発表した。この論文に関連した2017年の論文は、Bjorn-Gustaf J. Brooks氏によって地形情報の分類の論文に用いられ、彼によって統計ソフトウェアRのPackageも作成されている。 また、昨年度に引き続いて、非線形な回帰推定量について漸近正規性の成り立つ正則条件について、従来の独立同一標本の枠組みでの漸近論の正則条件を、一部、有限母集団に合わせて修正した条件の下で、独立同一標本の場合と同様の漸近分布が得られることが確認された。また、標本調査における分位点などの統計量を評価するうえで基礎となる、経験分布関数の分布について、いくつかの漸近分布の評価を得た。これらの成果については、査読付きの欧文誌に投稿する予定である。
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