研究課題/領域番号 |
16K03600
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
田中 勝人 学習院大学, 経済学部, 教授 (40126595)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | パネルデータ / 非定常性 / 漸近理論 / 連続時間確率過程 |
研究実績の概要 |
本年度の研究の主要目的は、昨年度と同様に、非定常パネルデータモデルの統計理論に関する研究遂行上の内容に関して、国内外の学会、大学などで発表して、コメントをもらうとともに、研究上の意見交換をすることであった。この点については、多くの経験を積むことができた。具体的には、英国のノッティンガム大学、エクセター大学、ケント大学、セントアンドリュース大学などでセミナー講演をして、多くの有意義なコメントをもらうことができた。研究内容としては、パネルデータモデルにおいて、誤差項が移動平均過程に従う場合のパネル単位根問題に対して、新たな成果を生み出すことができた。特に、係数がすべてのクロスセクションで同一の場合と、そうでない場合に、検定統計量の漸近分布がどのように異なるかについて、明確な解答を与えることができた。この成果は、国際的な学術誌にも発表することができた。ただ、依然としてモデルが単純すぎるとの批判もあるので、より現実に近いモデルのもとで議論する必要がある。この点については、今後の研究課題として、内容を深化、一般化していきたい。他方、連続時間モデルの統計的推測に関しても、英国のオックスフォード大学、そしてシンガポール経営大学におけるセミナー講演で有益なコメントをもらった。特に、シンガポール経営大学では、中国人の研究者2名との共同研究を実施して、論文にまとめることができたことは非常に有意義であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非定常パネルデータモデルに対する単位根検定の漸近理論に関して、誤差項が自己回帰過程に従う場合と移動平均過程に従う場合のそれぞれについて、クロスセクションの仮定が漸近理論にどのような影響を与えるかについて考察した。この結果は、誤差項が自己回帰の場合の結果は文献にあるが、ここでは、結果をもっと効率的に導出する方法を提示した。また、誤差項が移動平均過程に従う場合の結果はオリジナルなものであり、国際的な学術誌に発表することができた。他に、連続時間確率過程の推測問題について、シンガポール経営大学において2名の中国人研究者と共同研究を行い、現在も共同研究を継続している状況である。以上の点から、研究はおおむね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
考察してきた非定常パネルデータモデルの誤差項は、単純な自己回帰過程あるいは移動平均過程であり、この制約をゆるめた場合の議論をする必要がある。この点は、ずっと以前から考えてきた拡張であるが、議論をいかに展開するかという方法論に関して、よいアイデアが浮かばない状況なので、何とか打開策を講じたい。他方、研究を遂行する中で、連続時間確率過程のパネルデータモデルへの拡張というアイデアが生まれたので、この面からの考察を進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していた海外の大学や研究機関における研究発表の中で、相手方の都合などで取りやめたことや、別の研究資金により実現したことなどで、使用額が当初の予定を下回ったことによる。次年度は、海外での発表、報告および共同研究のための滞在費に充当したい。
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