研究課題/領域番号 |
16K03603
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
浅井 学 創価大学, 経済学部, 教授 (90319484)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 実現ボラティリティ / 長期記憶 |
研究実績の概要 |
この研究の目的は、実現ボラティリティのデータを使用して、ボラティリティのもつ長期記憶性について分析していくことである。特に、確率的なボラティリティが一般化ARFIMA過程に従うモデルを考えて、その仮定が適切かどうかを検証する。
平成29年度は、構造変化がもたらす「見せかけの長期記憶性」の問題に取り組んだ。当初は、Perron and Qu (2010)やQu (2011)の検定統計量の使用を検討していたが、Lee 他 (2003)のCUSUM検定を使用すれば、長期記憶の検証だけでなく、構造変化の時点も特定できることがわかった。日米英3国の株式指数の実現ボラティリティのデータを使って検証したところ、いずれも構造変化により、見せかけの長期記憶性が生じていることがわかった。
その他、予備的な研究として、4本の論文を完成させることができた。 まず、ボラティリティが一般化長期記憶過程(多項ゲーゲンバウアー過程)に従うケースについて、実証分析を行い、論文にまとめた。次に、日経225先物のボラティリティを予測する際に、原資産の長期記憶性を応用する方法を考案し、論文にまとめた。3番目に、長期記憶をもつ多変量非対称GARCHモデルについて、最尤推定量が漸近的に正規分布に従うことを証明し、論文にまとめた。4番目の研究では、長期記憶性と非対称性をもつような実現確率的ボラティリティ変動モデルを考案し、実証分析を行い、その研究成果を論文にまとめた。この4編の論文は、いずれも学術誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の検討していた方法よりも適切なアプローチをみつけて、実証分析を行うことができたため。
また予備的な研究ではあるが、前年度の研究成果から得られた知見をもとにして、4編の論文にまとめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究遂行前に予想していた状況とは少し異なり、構造変化の時点を特定することができた。まず補完的なアプローチとして、データを分割して、構造変化が起きていない期間について、長期記憶性をもつかどうか検証していく。そこで長期記憶性が示されるならば、平均のシフトが起きていると考えられる。
平成30年度の後半では、確率的ボラティリティが、長期記憶性と平均のシフトを併せもつときに、両方のパラメータを同時に推定する方法を検討していく。その推定結果を予測に役立てて、単なる長期記憶モデルを用いるよりも、予測力が改善されるかどうか検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
150円に満たない金額であるが、書類整理用の備品購入で差額が生じてしまった。 差額が生じないように購入していきたい。
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