本年度は、誤って特定化された平均に対しても頑健であるARCH検定の統計的特性を比較した。特に、Nadaraya-Watsonカーネル回帰に基づく手法と多項近似による手法に焦点を当てて研究を行った。これら2つの手法は条件付き平均の特定化を必要とせず、事前にはわからない様々な非線形モデルに対応することができる。本研究における分析結果から、これらの検定が様々な非線形モデルに対して有効であることが示された。特に、多項近似に基づくARCH検定がNadaraya-Watsonカーネル回帰に基づく検定よりも優れた統計的特性をもとことが明らかにされた。 また、昨年度に行っていた研究の修正を行った。昨年度は、誤って特定化された条件付き平均と分散の存在下で、時変的な特性を検証する検定の統計的性質を検証したが、限定された実験環境であったたとともに、応用分析がなされていなかった。本年度はより実際のデータ分析に対して汎用性が高い実験を行い、応用分析を行った。時変的特性が指摘されている経済データに本研究で使用された手法を適用し、実験結果が実際のデータにも当てはまるかを検証した。応用分析においても、シミュレーション同様、bootstrapによる平均の時変的性質の検定は時変的な分散のモデルに対しても頑健である一方で、分散の時変的な検定は、誤って特定化された平均の存在下ではあまり機能しないことが示された。この結果から、昨年度に示された内容をより妥当性の高くすることができた。 上記の研究は、現在学術誌に投稿中である。
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