首都圏の高速道路(首都高速道路㈱とNEXIO東日本・中日本が管理する高速道路)は、それまでバラバラであった料率を平成28年4月より対距離制料金へ移行した。それに伴い、料金が安くなった圏央道へ交通がシフトし、首都高の混雑は一定程度緩和した。 本研究は首都圏高速道路でのより本質的な料金改革であり、近い将来実現が望まれる「混雑に応じた料金」の評価を行い、提言としてまとめることを目的としている。 短期的に導入すべき混雑料金としては、シンガポールで導入されている一定走行速度を保証する「定期見直し型混雑課金」が、技術的にも難しくなく推奨できる仕組みと思われる。シミュレーション分析によれば、同混雑課金により社会的余剰(道路利用益の時間短縮便益などの消費者余剰と道路会社の料金収入の生産者余剰の合計)を大きくできることが明らかになった。 長期的に導入を検討すべき混雑料金として、アメリカの高速道路の多人数乗車専用レーンで導入されている「ダイナミック・ロードプライシング」を分析した。その結果、複雑な首都圏の高速道路ネットワークにおいて区間別に望ましい対距離料金を計算できたとしても、同料金を道路利用者に周知させ、経路変更を促す仕組みを作ることが難しいことがわかった。 なお、料金制度を変えるためには首都高、NEXCO 東・中だけでなく、高速道路保有機構、国・地方自治体の関連する制度の見直し、調整が必要となる。また、社会全体としては正の効果(社会的余剰の増加)があるとしても、これまでより負担増となる道路利用者が生まれることを考慮した、激変緩和措置、補償措置などについても検討が必要と思われる
|