研究課題/領域番号 |
16K03613
|
研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60313483)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 応用一般均衡分析 / Brexit / Melitzモデル / CGEモデル |
研究実績の概要 |
世界貿易の応用一般均衡(computable general equilibrium, CGE)モデルを構築した。とくにそこでは、Melitz型の企業の異質性と規模の経済を考慮したモデルを構築した。このMelitz型のモデルに加えて、規模に関して収穫一定である従来型のCGEモデルを用いて、英国の欧州連合(European Union, EU)離脱の影響をシミュレーション分析した。その結果、EU離脱後に両国間で再設定される関税障壁によって、英国と英国以外のEU諸国間の貿易は大きく落ち込むことがわかった。規模に関して収穫一定のモデルを用いると、英国はわずかな経済厚生上の利益、または、損失を被ることが予想されるが、規模の経済のあるモデルを用いた場合には、無視できない規模の損失が発生することがわかる。その損失は、英国がEU離脱から得られる便益の中での最大と期待されているEUへの財政拠出金の金額と同程度に達する。産業別に結果を詳細に見ると、英国の産業は、とくに繊維・衣料品、鉄鋼・金属製品、自動車・輸送機械部門において、大きく輸出を減らすことを通じて生産を減少させること等が明らかにされた。モデルの性質に関連していうと、Melitz型の応用一般均衡モデルを用いたときの方が、ほとんどの場合、英国の欧州連合離脱の影響はかなり大きくなることがわかる。この研究結果は、GRIPS Discussion Paperとして和文・英文の両方で公刊された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Melitz型の規模の経済のある応用一般均衡モデルのプロトタイプを構築するだけでなく、それを用いたシミュレーション分析まで行うことができるようになったため。
|
今後の研究の推進方策 |
Brexitの分析を改訂して、これまで考えてきた関税障壁以外にも、非関税諸壁や労働移動、EUとアメリカや日本とのFTAの影響を考慮した分析を行う。台湾における震災の動学的応用一般均衡分析についても、原著論文として最終的に公刊することを目指す。また、海外直接投資の影響を分析するためのデータ整理を進め、これを応用一般均衡モデルに取り込むことができるプロトタイプ・モデルの構築を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
高速・大量の数値計算のために2016年度にPC購入を計画していたが、懸念していたほど計算負荷が大きくなかったことから、本年度は更新せずに可能な限り既存のPCを利用することにしたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
より複雑化したモデルを構築し、追加的なシミュレーション・シナリオを試みるために、来年度において、PCの更新、HDDの拡張等に用いる。
|