研究課題/領域番号 |
16K03615
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
濱田 弘潤 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70323954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際援助 / トランスファー・パラドックス / 所得再分配 / 世代重複モデル / 資本蓄積 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,行動経済学の知見に基づき,望ましい国際的経済援助の在り方について,経済理論的観点から解明することにある.具体的には,援助国・被援助国に存在する利他性,互恵性,習慣形成や,援助効果についての認知バイアスを考慮し,実効性の高い国際援助はどうあるべきかを考察するための,理論的フレームワークを提供し,効果的な経済援助を考察することを目指している. 平成28年度は,上記のテーマに関して,以下の4つの研究実績を成果として挙げることができた.世代重複モデルの下で若年層と老年層の存在する動学的な状況を考え, [1] Hamada, Kaneko, and Yanagihara (2016)では,援助国の援助を若年層と老年層のどちらが負担するのが経済成長率の観点から望ましいか,また被援助国のどの世代に分配するのが望ましいのかについて,考察を行い,一定の明確な結論を得た.[2] Hamada, Kaneko, and Yanagihara (2017)では,1国内に存在する社会保障制度に伴う世代間分配政策が,援助の有効性にどのような影響を及ぼすのかについて,詳細な検討を行った.[3] 金子,濱田,柳原 (2017)では,援助の負担・分配比率や国内の所得再分配政策が,どのように援助国と被援助国の経済成長率に影響し,両国の社会厚生に影響するのかについて,結果をまとめた.[4] 濱田 (2016)では,援助国と被援助国の間に消費の外部性が存在する状況を考察し,消費の外部性が国際援助の有効性をどう変化させるのかについて解明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では,4ヵ年の研究計画を予定しており,研究初年度は,1.援助国と被援助国との経済援助の実態調査と,2.行動経済学や経済主体の非合理的行動の観点から援助行動の実態を理解するための先行研究調査を計画していた.しかし初年度に,査読付き雑誌2本の掲載が決定し,また本の1章及び紀要論文をまとめることができ,本研究課題について研究成果の着実な蓄積が実現していることから,進捗状況は概ね順調に進展しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度(平成29年度)は,第1年目で実施した実態調査と既存研究のサーベイを活かして,まだ昨年度は構築し分析できていない新たな,行動経済学の知見を活かした国際援助の理論的モデルを完成させる予定である.主に理論モデルの構築と研究論文の完成に重点を置き,また研究成果の国内外での報告と査読付き論文雑誌のへの投稿を目指す予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿作業が遅れたため,当初見込んでいた英文校正料を次年度に使用することになったため.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度論文投稿を目指し,英文校正料として使用する予定である.
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