研究課題
高齢化に伴う社会保障給付費を誰が負担するかという議論の中で、高齢者自身の住宅資産を活用する案が注目を集めている。この方法としてリバース・モーゲージの活用が注目されるが、欧米に比べてリバース・モーゲージ市場には厚みがなく、高齢者の認知度は低いと言われる。一方、日本では、高齢者が子に住宅資産を残し、その礼として金銭援助を子から受け取るという互恵的依存関係(親子間リバース・モーゲージ)の存在がしばしば指摘される。そこで、「日本家計パネル調査」(慶應義塾大学)の個票データを使用し、子が親から住宅を遺産として受け取ると期待したときに、実際に親への金銭援助額を増やすかどうかを分析した。その結果、相続期待が上昇すると、援助額が上昇することがわかった。しかし、平均値で計算すると、子から親への金銭支援額は年間14万円ほどにとどまっている。次に、住宅を所有する高齢者が、住宅資産額が増加したときに、消費額も増加するかどうかを検証した。その結果、高齢者に子がいる場合のみ、この関係が統計的に有意になった。しかし、平均値で計算すると、消費額の増加はわずかであった。この結果は、上の結果と整合的で、親子間リバース・モーゲージを通じた子の金銭支援額が消費を維持するには不十分であることを示唆する。子は親への金銭的な援助の代わり非金銭的な援助を増やすかもしれない。そこで、子が親から住宅を遺産として受け取ると期待したときに、非金銭的な援助を増やすかどうかを分析した。まず、非金銭的な援助の代理変数として、親との居住距離(近いほど、親と接触・援助しやすい)について見たところ、予想通り、相続期待が高いほど、親との居住距離が近いことが確認された。次に、相続期待と親への介護・介助頻度の関係を見たところ、予想とは異なり、これらの間には統計的に有意な関係が観察されなかった。
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Working Paper, Faculty of Economics, University of Toyama
巻: No. 321 ページ: 1-23
10.15099/00019273