研究課題/領域番号 |
16K03624
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
橋本 賢一 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (70403219)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国際マクロ動学 |
研究実績の概要 |
本研究では、生産要素や生産拠点の国際間のシフトなどに表れる産業構造の変化を通じて、動学的マクロ均衡にどのようなインパクトを与えるかを分析するものである。またモデル化にあたって、失業率を明示的に扱うことができる国際マクロモデルを構築することを目標とする。さらに様々な経済政策がマクロ変数(GDP・消費・雇用率)や経済厚生にどのような効果を及ぼすかを分析する。 本年度は前年度までにまとめてきたモデルの拡張分析をおこなった。具体的には、2国経済の枠組みのもとで、成長率が実証研究から指摘されている規模効果をクリアーした内生的成長モデルを考察し、特に成長のエンジンは各企業による研究開発投資を通じて内生的に生産性が成長(プロセスイノベーション)するモデルをベースにして、雇用の変動を考察できるようにモデルを拡張した。 具体的には労働市場に摩擦を考慮することにより均衡において失業が生じるモデルに拡張をおこなっている。簡単化のため、労働市場は最終財セクターでのみ利用されることにし、中間財や研究開発セクターは最終財を利用するlab-equipment typeのモデルを利用している。この時、2国間の市場規模は、各国の均衡雇用率に依存することになり、産業の集積メカニズムに影響を与えることになる。すなわち輸送コストの低下や知識のスピルオーバーの上昇などを通じた経済統合の分析だけでなく、各国の労働市場政策が、国際間にどのように波及することができるかを、モデルを用いて解析的結果を出すことができた。これらの理論的な結果は平成31年度初めにDiscussion Paperにまとめることにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は研究課題に従って失業率を2国マクロ動学の枠組みに導入し基礎的なモデルを構築することができた。 基礎モデルの構築では分析する長期均衡(定常状態)が動学的に安定でユニークな均衡を証明することができたことから、その長期均衡において政策分析をすることを可能なモデルとなっている。経済政策として、具体的には労働政策(失業手当やサーチ企業への補助金政策)が挙げられるが、これらは昨年度まで構築してきたモデルでは分析できない重要な課題となっている。 特に政策を通じた雇用変動の国際間波及の分析を見ることができ、これまで構築してきた研究を発展させることができ、リッチな結果を導出できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
まず初めに、平成30年度において計算を進めていた研究を平成31年度すぐにDiscussion Paperにまとめあげ、加えて昨年度までにまとめていたDiscussion paperを含め、日本経済学会や各セミナーで発表をおこない、いただいたコメントをもとにモデルの改善をおこない、修正を加えて、学術雑誌へ投稿することを考えている。 そして、当初の研究テーマの雇用変動に関しての政策分析、特に労働政策に関して分析を進めるだけでなく、他のアプローチに関してサーベイをおこなったうえで、モデルを構築し、分析を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: 残額の3万程度は当初予定していたセミナーに参加できなかったためである。 使用計画: 構築された失業が存在する国際マクロ動学モデルのもとで、経済環境のパラメータについて解析的に均衡の性質を調べる。そのため、必要となる数理統計ソフトを追加購入する予定である。モデル分析をおこなったそれぞれの研究について、コメントをもらうために、研究テーマに関しての有識者のところに研究報告をする。また日本経済学会や他の学会等で、研究成果を報告する予定である。雇用変動の他のアプローチの仕方に関してのサーベイのために、海外の学会や、国内の学会に参加をして資料を収集する予定である。
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