現在、消費や生産も含め社会経済のシステム全体が環境低負荷型へとシフトする動きが進んでいる。その中でも環境配慮財の研究開発を推進しながら国際的な技術優位性を高める必要性は極めて高くなっている。そして,中間財の貿易拡大に伴って多国籍化する企業も増加した。そうした状況で、競争法のガイドラインは現実に対応しておらず、未整備同然の状態が続いている。これは、研究の蓄積が十分ではないことを物語っている。そのため、本研究課題は、その領域に研究成果の蓄積を行うことを主たる目的としている。延長した2019年度は、環境低負荷のための品質改善投資を行う複占企業同士の合併基準についてゲーム理論分析を用いて一定の理論的な帰結を導いた。その理論研究においては、スピルーバー効果が企業間の技術的距離によって内生的に決まるモデルを新たに採用し、市場において数量競争および価格競争が行われている2つの状況において環境低負荷のための品質改善投資を行う複占企業同士の投資量の比較や経済厚生の比較とともに合併政策の望ましい在り方も考察した。さらに、独占企業のCSR(企業の社会的責任)にもとづく環境投資が経済厚生や環境にどのような影響を与えるのかについてのより精緻化した分析を断続した。こうした一連の研究成果の一部は、国際的に高く評価される査読付き学術雑誌に投稿して掲載が決定した。その他の研究成果は、投稿中で審査(査読)のプロセスにある。
|