研究課題/領域番号 |
16K03629
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高塚 創 大阪市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50304572)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 最適関税 / 関税競争 / 資本輸入税 / 輸出関税 |
研究実績の概要 |
今年度はまず,過年度に行った可動資本が存在する場合の最適関税・関税競争に関する研究について,各国が資本輸入税を課すことができるケースに拡張し分析を行った.これは当該論文を国際査読付き学術誌に投稿した際に頂いたコメントに対応するためのものである.その結果,資本輸入税を課さない場合と異なり,二国のサイズ差が十分大きいならば,大国の方が高い関税を課すことが分かった.大国は交易条件改善動機でより高い資本輸入税を課すが,それによって資本流入が減り生産が減少してしまうため,生産拡大のために関税を高くする動機が大国に強く働くからである.この結果は伝統的な関税研究の結果に類似しているが,メカニズムは全く異なるものである.また,関税競争の厚生への帰結については,資本輸入税を課さない場合と類似しており,輸送費が非常に高い場合には小国が関税競争に勝ち(ゼロ関税の状態よりも厚生が上昇する),大国が負ける(ゼロ関税の状態よりも厚生が低下する)ことが起き得ることが分かった.以上の研究をとりまとめ,国際査読付き学術誌に再投稿したところである.さらにこの研究の拡張として,現在輸出関税をも課すことができる場合の分析を行っている.これについては来年度中に結果を取りまとめ,新たな論文として国際査読付き学術誌に投稿することを計画している.最後に,昨年度行った温暖化ガスの排出税とそれに対するabatement行動を導入した二国貿易モデルの研究については,国際学術専門誌Australian Journal of Agricultural and Resource Economicsに受理・掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大のため,遠隔講義への対応など当該研究以外の追加的な業務が発生し,進捗がやや遅れている.また,研究に関する出張(打ち合わせ,情報収集,研究会,学会等)の多くは中止となり,そのことも遅延に影響している.そのような中でも,研究論文1本を国際学術専門誌に掲載し,1本を修正要求に対応・再投稿できたのは成果であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
可動資本が存在する場合の最適関税・関税競争に関する論文について,資本への課税政策に加え,輸出関税をも課すことができる場合の分析を行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため,遠隔講義への対応など当該研究以外の追加的な業務が発生し,進捗がやや遅れている.また,研究に関する出張(打ち合わせ,情報収集,研究会,学会等)の多くは中止となり,そのことも遅延に影響している.そのため,研究期間を1年延長し,次年度使用額が生じている.
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