研究課題/領域番号 |
16K03630
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
実積 寿也 中央大学, 総合政策学部, 教授 (20325690)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スマート社会 / ブロードバンドエコシステム / OTT / ネットワーク中立性 / 産業政策 |
研究実績の概要 |
2019年度は、これまでの研究成果の一部(特にネットワーク中立性をめぐる日本政府独自の取組みを中心に)を、情報通信学会がとりまとめたTelecommunications Policies of Japan (Advances in Information and Communication Research)(Mitomo [ed.], 2020)内のブックチャプターとしてまとめ、公刊に至った。本件については、申請者が属する研究コミュニティを通じて内外に周知を行った。 さらに、前年度に引き続き、近年、急速に注目を集めつつあるゼロレーティングという新たなサービスの提供が、ネットワーク中立性に、さらにはそれを通じてブロードバンドエコシステムにおけるレイヤ間競争に及ぼす影響について、実証分析による知見に基づく政策提言を含む成果としてまとめ、JANOG44および国際電気通信学会(ITU Bangkok 2019)で報告し、国内の最先端技術者や海外の学識経験者と有益なディスカッションを行った。とりわけ、ブロードバンドエコシステムをめぐる議論については、すでに公刊した「OTT産業をめぐる政策分析」の内容を踏まえ、さらに進めたものとなっている。 研究成果の社会への展開については、2018年度に引き続いて総務省で開催されている「ネットワーク中立性に関する研究会」での議論に参画することに加え、同研究会の下で組織された「ゼロレーティングサービスに関するルール検討ワーキンググループ」にも委員として参加し、これまでの研究知見を報告書に反映させ、具体的な法規制デザインへの貢献を試みている。本件については2021年度中に報告がとりまとめられる見込みであり、引き続き研究成果のインプットにつとめていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実質的には所定の成果を達成しつつあるものの、具体的な研究項目は交付申請時点の研究計画からはやや異なる部分がある。本申請が目指した研究が、その時点で想定していた論点を超える拡がりを見せたことがその主たる原因である。具体的には、途上国支援政策への反映については研究開始当初に予定されていたリソースの投入は行えていないが、それに代わって、ゼロレーティングという論点には十分な研究時間が割かれている。 また、構成員として関与している総務省研究会での議論とりまとめの時期の関係で、研究成果のとりまとめが当初スケジュールから後ろ倒しになっている。
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今後の研究の推進方策 |
得られた研究成果の公刊ペースを加速していく。すでに、複数の原稿を書き溜めるとともに、6月開催の情報通信学会での報告を踏まえた投稿も予定し、年内公刊を目指す。 研究を通じて得られた知見については、総務省において現在実施されている関連制度デザインにインプットすることができており、引き続き努力を継続したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)物品費や人件費・謝金等が少なく済んだため。 (利用計画)次年度にて、学会発表や学会誌等への論文投稿に必要となる費用に充当する計画である。
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備考 |
ITU Telecom World 2019のForum Session "AI for ALL? Building on a global ecosystem to boost societal and economic potentials"にてパネリスト(2019年9月10日)。 JANOG44の「ネットワーク中立性の原則とルール」パネルセッションにて講演(2019年7月25日)。
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