ネットワーク中立性問題に関するわが国政府の対応と2017年の政策変更の背景と意図について、欧米との差異に着目しつつ、整理を行い、令和2年2月にオンライン開催されたTPRC48で報告を行った(発表標題:“Japan's new framework for net neutrality: The journey so far and future challenges”)。当該報告については、論文公刊を目指しており、現在、査読委員会から得られたコメントに基づく精緻化作業を継続中である。これにより、国際的な議論の場ではほとんど話題に上ることのなかったわが国でのネット中立性への取り組みについての情報が共有され、欧米の価値観のみに基づいて進められつつある国際的なルール形成の試みを、わが国産業構造の独自性を反映できるだけの柔軟性を持つものに転換することに貢献する。 さらに、政権交代により本件に関連して大幅な政策転換が予想される米国の状況については、米国の大学や業界団体主催のオンライン会議、セミナー、ワークショップなどへの参加および有識者との意見交換を通じて情報収集中であり、上記論文への反映を予定している。 なお、総務省の研究会等(「ネットワーク中立性に関する研究会」、「ネットワーク中立性に関するワーキンググループ」、「固定ブロードバンドサービスの品質測定手法の確立に関するサブワーキンググループ」)への参画を通じて、これまでの研究知見の政策形成への反映も試みている。加えて、日本インターネットプロバイダー協会が実施したイベント(沖縄ICTフォーラム2020 in 久米島)にパネリストとしてオンラインで登壇し、最新の政策事情や今後のルール作りの見通しなどについて電気通信事業者との意見交換を実施した。
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