研究課題/領域番号 |
16K03633
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
高見 博之 大分大学, 経済学部, 教授 (10264326)
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研究分担者 |
中村 保 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (00237413)
二宮 健史郎 滋賀大学, 経済学部, 教授 (30273395)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 混合寡占 / 最適民営化比率 |
研究実績の概要 |
1980年代以降の公企業の民営化の流れの中で,公企業と民間企業が競合する市場(混合市場)の分析が進んできた。近年の二国間あるいは多国間の貿易協定が協議されている状況から,経済環境が大きく変化する可能性がある。そこで本課題では,混合寡占市場において労働市場と金融市場を考慮するとともに,補助金政策などの経済政策面での経済環境の変化が,郵政事業や政府系金融機関などの公企業の民営化の程度に与える効果を検討することを目的として研究を進めてきた。 本年度は, 東京,神戸,彦根,草津,久留米,大分での学会,研究会参加,資料収集,研究打合せを通じて研究を進め,以下のようなことが明らかになった。企業行動を分析する際には,外生変数として天候や自然災害,天然資源だけでなく,国内外の政治情勢や経済政策など経済環境の変化も重要な要因となる。そこで,複占競争に直面している企業の環境が,需要に関する不確実性を考慮した場合に雇用量や賃金率にどのような影響が及ぶのかを検討した。分析手法として,Nakamura and Takami(2015)で提示される等総余剰曲線と反応曲線を用いた図解によるアプローチを採用した。 結果として,労働組合が賃金決定し,企業が雇用量を決定する特定化された混合複占モデルの場合,需要の不確実性は民営化比率に影響しないという結論が得られた。この結論は単純化されたモデル設定に依存しているため,より一般的な状況を検討する必要があるが,外生変数としての需要の不確実性という経済環境の変化が民営化に与える効果として重要な意義を持つと考えられる。 また,労働市場の状況が金融市場に及ぼす効果を検討するために,経済の安定性について検討し,寡占市場において経済の金融構造が安定的な場合は,報酬制度としてprofit sharing制度を採用している場合は,経済がさらに安定化することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合寡占市場モデルに適用可能な外生的要因としての経済環境の変化について,TPP(環太平洋経済連携協定)の動向や景気動向などの経済状況,規制緩和や補助金政策の変化が挙げられる。これらの外生的要因の1つとしての需要の不確実性についてNakamura and Takami(2015)で提示される図解によるアプローチを採用し,需要の不確実性と財市場での混合寡占への効果を分析することができた。したがって,今後さらに検討する余地はあるものの全体としてはおおむね順調に進展している,と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに検討した需要の不確実性と財市場での混合寡占の分析状況からより需要の不確実性の変化する場合や他の経済環境の変化が最適民営化比率に及ぼす効果について検討を進めていく。その際,関連する文献の資料収集を進める同時に,研究成果(途中経過も含めて)を発表し,研究の方法や進むべき方向について,より多くの研究者の方よりご意見・ご批判を頂きながら研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
29年度の研究を進める上では支障は無かったが,29年度に報告の機会のなかった研究成果をより発展させるため当初計画の見直しを行ない,平成30年度に学会報告や研究会報告などの成果発表の機会を多く設定するため。
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