本研究のテーマは、国際間における製品の質の違いやその変化が貿易を通じて国内経済に与える影響の分析である。具体的には、[1]新製品の輸入ラッシュによる国内市場の衰退と適切な産業政策のデザイン、[2]製品に対する安全基準の国際的整合性が国際貿易に与える影響、[3]原発事故後の被災県産農産物の取引の分析、から構成される。 本年度は研究最終年度であり、論文の完成・公刊に時間を費やした。[1]については、論文”An import surge as a trigger for protectionism: A consumer’s perspective”(共著)で、外国製品のダインピングは、国内価格の上昇を通じて国内消費者の余剰を減少させることを示した。当論文は査読付きの英文学術雑誌に投稿準備中である。また、[2]については、2000年代に日本が直面したPCモニタの輸入急増、日本製PCモニタの需要減少を研究背景として、製品の特徴が価格に与える影響を分析した。日本製品は需要減少に直面しながらも、質を高めたことが明らかになった。これは論文”Declining Demand and Product Quality: An Empirical Study on the Japanese PC Monitor Market’’として、経済産業研究所(RIETI)のディスカッションペーパーに掲載された(20-E-033)。[3]については、福島県・山形県で生産されたモモの取引データを通じて、原発事故がこのモモに対する消費者の選好に与えた影響を実証分析した。消費者の選好パラメターが大幅に低下したことを示したこの論文は、「原発事故が消費選好に与えた影響の分析 ―被災県産モモを事例に― 」(共著)として公刊された(『横浜市立大学論叢社会科学系列』71(1) 33 - 56 2020年1月)。
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