研究課題/領域番号 |
16K03637
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
川勝 健志 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (20411118)
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研究分担者 |
RUDOLPH Sven 京都大学, 経済学研究科, 特定准教授 (20737407)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カーボンプライシング / キャップ・アンド・トレード / アメリカ / カリフォルニア州 / 北米西部地域排出量取引制度(WCI) |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果は、大きくは2つある。1つ目は、昨年度にカナダのブリティシュ・コロンビア州財務省及び環境省、ビクトリア大学等で行った同州の炭素税と連邦レベルでのカーボンプライシングをめぐる動向に関するヒアリング調査の結果に基づいて、国内外2つの学会で研究分担者と共同報告を行ったことである。 国内では9月に高知工科大学で開催された「環境経済政策学会(SEEPS)」で報告し、討論者から本研究の今後の発展に資する有益なコメントが得られた。他方、国外では同じく9月に米国アリゾナ州で開催された「第18回環境税国際会議(GCET18)」で報告するとともに、参加していた世界各国のカーボンプライシングに関する研究者等に来年度以降の研究協力や研究交流を依頼し、了承を得ることができた。またそこで共同報告した論文については、GCETの研究叢書に投稿し、査読を経てすでに掲載が決定している。 2つ目は、11月に米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)を訪ね、同州の排出量取引制度の実績や北米西部地域排出量取引制度(WCI)参加への他州の動向、連邦レベルでの可能性などに関するヒアリング調査及び資料収集を行ったことである。また同時に、同州の有力な環境NGOである環境保護基金(EDF)、カリフォルニア大学バークレー校及び同校労働及び雇用調査研究所(IRLE)、サンフランシスコ大学の研究者にも会い、カリフォルニア州をはじめとする北米各州あるいは連邦レベルでのカーボンプライシングの可能性について議論・学術交流できたことは、本研究を今後さらに発展させるうえで極めて重要な研究ネットワークの構築にもつながった。 なお、以上の研究成果を挙げるために、研究分担者とは本年度中、ほぼ月に1度のペースでミーティングを行い、学会報告に向けた意見交換や現地調査に必要な情報の共有、意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、2年目の研究計画として掲げた2つのテーマ(①炭素税が導入されて以降、産業の州外流出やそれに伴う他州での炭素リーケージが生じていないか、②炭素税を導入している州が米国西部地域レベルの排出量取引制度(WCI)に参加した場合に、その制度設計にどのような影響を与えうるか)に関する情報及び資料については、昨年度カナダのブリティッシュ・コロンビア州で行った現地調査で一定収集することができた。また、本年度はその成果を踏まえた分析に加えて、北米のサブナショナルレベルでのカーボンプライシングとしてもう1つの注目すべき事例である米国カリフォルニア州の排出量取引制度等について、現地でヒアリング調査をすることもできたからである。 以上の成果については、学術雑誌に投稿・公表するために、すでに研究分担者と共同で論文執筆の準備を進めていること、また次年度の計画として掲げている研究テーマに関する文献・資料のサーベイを行うとともに、国内調査のスケジュールも概ね確定していることから、進捗状況は概ね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまでの2年間にカナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカのカリフォルニア州でそれぞれ炭素税、排出量取引制度に関する文献サーベイ及び現地調査といったインプット作業を中心に行ってきたが、今後はその成果をアウトプットすることに力点をおく予定である。その際には、研究分担者とはもちろん、連携研究者や国内外の学会で構築したネットワークを用いて、次年度の目標を達成できるように努めたい。 他方、これまでは北米のカーボンプライシングのみを注視してきたが、今後は国内動向にも目を向けて、本研究の最終的な目標の1つである日本のカーボンプライシング強化に求められる課題を明らかにしたい。そのために次年度は、北米の事例から日本が学ぶべき教訓を総括して整理するとともに、国内のカーボンプライシングに関する関係機関や研究者へのヒアリング調査を行う予定である。
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