本年度の研究成果は、日本のカーボンプライシング設計論に少なくない影響を与えるであろう様々なステークホルダーを訪れて、ヒアリング調査及び資料収集を行ったことである。主なヒアリング対象は、次の通りである。 1つ目は、日本経済団体連合会および日本経済同友会である。両者はその構成メンバーの違いから、カーボンプライシングに対する考え方にもかなり違いがあり、その導入に伴う経済的影響への懸念や今後のエネルギー・気候変動政策のあり方等について、広く意見交換・議論できたことは、本研究課題の1つとして重要な制度設計をめぐる利害調整の論点を明確にするうえで貴重な機会となった。 2つ目は、環境省地球環境局である。同省では、地球温暖化対策税をはじめ国レベルではまだ導入されていない排出量取引制度など、日本のカーボンプライシングの今後のあり方について、同省の考えや展望についてヒアリングしたうえで、昨年度までの北米のカーボンプライシングに関する調査研究の成果概要を紹介・共有し、それらが日本の議論にいかに寄与しうるのか意見交換を行うことができた。 3つ目は、地方自治体である。国に先駆けて排出量取引制度を導入し、成果も挙げている東京都では、これまでの実績と導入後の制度変化・発展や今後の課題などについて、東京都に追随して導入した埼玉県では、同県の実績、東京都との連携、他府県への波及効果の可能性について意見交換・議論を行った。また、WWF Japanや三菱UFJリサーチ&コンサルティングでもヒアリングを行い、日本のCPのあり方やETSの全国的な拡がりの可能性について議論できたことは、本研究の研究成果をまとめるにあたって、極めて有益であった。 以上の研究成果の一部は、学術雑誌(Carbon and Climate Law Review)に投稿し、すでに掲載が決定している。
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