研究課題
本研究は、人口高齢化により医療介護産業の労働需給バランスが将来的にどのように推移するかを、多部門世代重複モデルの応用一般均衡分析を活用して明らかにしようという試みである。日本経済全体で人材不足が懸念されている今日、とりわけ医療・介護分野ではその懸念が大きく、政府でも人材確保に関するシミュレーションと政策の検討がなされている。コロナ禍により、GDP等に対する政府の中長期の見通しが大きく変わったため、直近の状況変化を反映するのに苦心したが、研究計画のベースとなる閉鎖経済型で市場に摩擦の無い多部門世代重複モデル(14産業部門)を構築した。そして、人口高齢化による医療介護需要の増大によって社会保障負担が増加して経済成長は落ちるのか、それとも需要の増加が成長エンジンとなり他の産業にプラスの影響が波及することで経済成長が促進されるのかを分析した。シミュレーションの結果、医療・介護需要の増大は、短期的には BtoC 産業にプラスの効果をもたらすが、長期的には高齢化に財政再建の効果が加わって成長を鈍化させることなどが示された。また、政府の医療介護に関する労働需給の見通しは機械的試算によって行われているが、人材確保に際して他産業との間で競争となる部分が加味されていないため、他産業の労働需給などの影響も考慮している本研究に比べて就業者数の見込みが高めに出ることが示された。研究成果は、論文(英語)が雑誌に掲載されたほか、最終年度には書籍としても出版された。このほか、物価、賃金や利回りなどが平均周りで確率変動した場合への発展を目的に、ベンチマークとして公的年金財政検証のモデルに適用した研究を最終年度に学会発表した。
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企業年金
巻: 42 (4) ページ: 18-21
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