本研究の目的は、現在の中国経済の発展の停滞要因を金融仲介の側面から実証的に考察することである。そのひとつの要因として国有企業の再度の高まりや、国有企業と地方政府との癒着等の近年の中国経済における事象に注目し、そのような事態が金融機関等を通じた企業への資金配分に与える影響等を計画経済時代にまで遡って、現在までの各時期において実証的に分析した。最終年度に行った研究活動と得られた成果は以下のとおりである。 中国における国有企業と地方政府の関係の保持を実態解明と、関係の保持による金融仲介機能への影響を実証的に分析する。そして関係保持によるメリット、及びデメリットの発生可能性についても考察を行った。現地調査では金融機関サイドからの企業の信用格付けをはじめとする評価のやり方の概要や現地経済に対する見解についてヒアリングを行い、企業からは銀行からの借り入れ状況や負債全体の状況、取引先企業との企業金融を通じた資金調達の状況をヒアリングした。それらを踏まえて企業の業績変数と負債の関係を企業の既得権益、特に地方政府との関係保持に関する変数を取り入れた実証モデルをセッティングし、その実証分析を行った。また企業の生存維持可能性に対する各種変数がどのように影響するかについても分析を行った。 その結果、企業の業績には政府との関係の強さを示す変数も影響していること、またその変数は同時に競争力の弱い企業の市場からの淘汰を抑制してしまうという影響を持っていることが示唆された。
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