事業初年度である平成28年度に実施した既存研究の精査、及び発展性の検討に基づき、前年度である平成29年度事業において、社会的厚生関数を媒介とした、生産面と生活面を結ぶ代替的空間経済モデルの構築に向けた分析がなされた。ここでは、厚生経済に係る諸問題を回避するため、財・サービスへのアクセス性、及び外部経済としての集積経済をはじめとした空間経済の立地諸因子を用いた考察を行った。 その拡張として、本事業最終年度として、平成30年度は、どのような経済空間の再編もしくは空間政策の再検討が実社会の実情に応じて求められ、どのような条件を満たさなければならないのか、解明していくことを事業目標として設定した。 平成30年度は、2本の研究について関連2学会においてそれぞれ研究報告を行い、専門家との議論を重ねた。成果物として、"Reorganisation of the spatial economic system in a population decreasing region"、"Analysis on firm behavior and individual's utility maximization through regional agglomeration economies"、及び "A role of agglomeration economies for a self-sufficient regional economy" が得られた。 最終的な結論として、地域内人口や経済活動の数が減少する地域においては、これまでの経済政策では十分な対応に限界をきたしており、その代替として広域的な地域間連携が不可欠であることを示した。ただし、広域的な連携は自発的に形成しないことから、本研究では、具体的にどういったプロセスが必要であるかについても政策的インプリケーションを与えた。
|