研究課題/領域番号 |
16K03647
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
丹野 忠晋 拓殖大学, 政経学部, 教授 (40282933)
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研究分担者 |
矢崎 敬人 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 准教授 (10345150)
山田 玲良 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (50364203)
林 行成 広島国際大学, 医療経営学部, 教授 (90389122)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 特許保護 / 逸失利益 / R&D投資 / 医療用医薬品 / 流通 / 医薬品卸 / 総価取引 / 単品単価取引 |
研究実績の概要 |
今年度はイノベーションの理論研究と医療用医薬品の実証研究を行った.理論研究に関しては,日本応用経済学会春季大会(2017年6月,久留米大学)とThe 16th International Conference of the Japan Economic Policy Association(2017年11月,沖縄)で報告を行った. イノベーションとその特許保護のモデルは,特許を侵害するかどうかのタイミングを変更したため本年度中の完成にはいたらなかった.しかしながら,逸失利益の回復制度の下では,効率的な技術であれば特許保護を強化すれば特許企業の利益が上がるが,一方で非効率的な技術であれば特許保護がかえって特許企業の利益が下がる可能性(passive infringement)があるという興味深い知見が得られた. 実証研究について,入手したデータの回帰分析は終了しているが,丹野・林(2013)「日本の医療用医薬品の卸売企業の現状とその経済学的分析」の系列分析から捉え直すことと需要側の特徴をさらに明確にして分析を実施した.幾つかの仮説を設けた.H1:GE(ジェネリック医薬品)と競合関係にあるときメイン卸以外は値引きする.H2:GEがあると大量の注文により値引きが行われる.H3:総価取引だと割引しない.H4:GEがないと数量割引をする.H5:薬局の規模により割引する.これらの仮説に関して,H1は採択され,H2は棄却され,H3は一部採択され,H4は採択され,H5は棄却された.H3については,特定のメーカーの医薬品によって値引きをするケースがあることが確認された.すなわち,メーカーと強い関係にある卸は当該メーカーの医薬品を総価取引であっても,値引きしないことが明らかになった.丹野・林(2013)が分析している系列が他の取引形態の企業と異なった行動を行っていることを解明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究において模倣企業の行動のタイミングを変えたもののまずまずの成果が得られている.しかし,2階の条件の確認と限界費用の非負条件と複数の制度の下で考慮すべき点が多く複雑な解になると考えられ,完成には少し時間がかかることが分かった.しかしながら,オーソドックスな手法を用いて先行研究をさらに進めた研究であり,その研究成果は十分学術的な価値があると考えられる. また,実証研究については,データは揃っていたものの共同研究者(データ入手・入力,産業組織論,医療経済学,社会薬学,計量経済学)が多く,なかなか打ち合わせを実施することが難しかった.しかしながら,本年度(2017年度)の共同研究の打ち合わせにおいて様々な視点から検討した結果,満足できる成果が現れた.他の研究者が行っていない研究なので,学術雑誌への掲載については容易であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は2018年度中に理論論文を完成させて学術雑誌へ投稿したい.できれば年内の採択を期待している.その次の研究として上流企業のR&D投資と特許保護を組み入れたモデルにおいて下流の競争と価格規制を分析する.このモデルが医療用医薬品市場の良い単純化になり様々な政策的な含意が導けると予想している. 医療用医薬品の実証分析についても学術論文の完成,投稿,および採択を期待している.この研究では研究所の顧客にいたいするweb上のアンケート調査を元にデータを入手している.できるならばもう少し多くのデータを入手して今まで得られた結果の妥当性を吟味したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
3月中に事務補助委託が発生し,札幌で研究会を開いたために旅費に支出した.これは来年度(2018年度)以降も続く研究である.
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