研究課題/領域番号 |
16K03648
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
筑井 麻紀子 東京国際大学, 商学部, 教授 (40275798)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 産業連関分析 / 環境経済学 / 地域間比較研究 / 中国 / 政策シミュレーション / 経済政策 / 計量経済学 / 地域経済学 |
研究実績の概要 |
本年度は鉱業部門の推計を中心に取り組んだ。中国の鉱業部門の活動と排出される廃棄物の性状は、日中では大きく異なる。しかし、中国環境統計年鑑を始めとする中国の環境関連の主要統計には廃棄物分類別の排出量が明記されていない。このため、何らかの方法での鉱業部門の活動と排出される廃棄物の推計が必要である。本年度はこの課題に対し、次の二つのアプローチで取り組んだ。 第1は、日本以外の鉱業が盛んかつ廃棄物統計資料が整った国のデータから、中国の鉱業部門の廃棄物分類別排出量を推計する方法である。本課題では、オーストラリアを対象としたReynolds et al. (2016)の廃棄物産業連関分析の推計結果をもとに、拡大推計を試み、EcoBalance 2018で研究成果を発表した。しかし、この拡大推計では芳しい結果が得られなかった。ベースとなる国際産業連関表の整備状況から2014年ベースで検討を行ったが、中国の統計資料では、鉱業部門からの廃棄物の総量が145百万トンと記載されていたにも関わらず、Reynolds et al. (2016)で得られた廃棄物排出源単位から推計した値は2百万トンと大きく乖離していた。また、鉱業部門の廃棄物は、鉱さいの扱いを始め、どの部分を統計上廃棄物として捉えるかが国によって異なるため検討が必要であることが明らかになった。 第2は、中国の鉱業部門の中でも、アスベストに着目した取り組みである。アスベストは様々な工業製品・建築資材に広く用いられていたが、中皮腫を始めとする深刻な健康被害をもたらす鉱物である。しかし、USGS Mineral Statistics (2014)によれば、中国ではなおもアスベストが生産されており、興味深いことに、輸出のみならず輸入も行っている。ICES 2020では中国を含む、アスベストの国際フローを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鉱業部門の推計が「研究実績の概要」で説明した状況により、難航しており、どのようにすべきか検討中である。また、この鉱物部門の推計の途上で、健康被害や環境問題としてはるかに深刻なアスベストの採掘・製品製造・製品使用・インフラへの利用といった問題に気づいたため、こちらの課題についても検討を進めていたため、申請時の研究計画からは遅れが生じてしまっている。
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今後の研究の推進方策 |
鉱物部門の推計方法に関する課題に取り組むと共に、他の部門については、前年度に計画したように、中国の統計資料や既存の研究成果(特に中国環境産業連関表(CEEIOT, Liang et al.2015)を)活用し、多地域間産業連関表WIOTの拡張を行い、多地域間廃棄物産業連関表の推計作業を勧めたい。また、近年注目されている国際貿易における付加価値貿易の考え方を導入し、中国とその貿易相手国との環境負荷の責任分担を明らかにしている。また、アスベストのフローを考慮した拡張も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
既に「研究実績の概要」と「現在までの進捗状況理由」で述べたように、研究の取り組みに従い、予想外の結果が得られたため、論文投稿の計画が後ろ倒しになったために予定していた支出が発生せず、次年度である2019年度使用額が生じた。今年度は推計作業と成果発表を中心に取り組むため、謝金と論文投稿費、英文校正費、掲載費といった目的での使用 を中心としていく予定である。
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