研究課題/領域番号 |
16K03648
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
筑井 麻紀子 東京国際大学, 商学部, 教授 (40275798)
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研究分担者 |
松村 敦子 東京国際大学, 経済学部, 教授 (60209608)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産業連関分析 / 環境経済学 / 地域間比較研究 / 中国 / 政策シミュレーション / 経済政策 / 計量経済学 / 地域経済学 |
研究実績の概要 |
製造業は一般に廃棄物の排出を始めとする環境負荷が高い。本研究では世界の製造業の主要国である中国に対して、日本を含む中国の主要貿易国の消費需要がどのように影響を与え、また同時に環境負荷を誘発しているのか、各国の産業間の取引関係を表す多地域間産業連関表を利用した産業連関分析によって明らかにしようとしている。2021年度の本研究の成果は大きく2つに分けられる。第1は既存のCJWIOT 2014の推計である。CJWIOT 2014は既存の多地域間産業連関表を、中国と日本の廃棄物排出・投入(リサイクル)、廃棄物処理部門、CO2排出量について拡張したものであり、本研究で目的としている分析を可能とする産業連関表である。財・サービス部門および付加価値部門に関するベース表としてWIOT 2014 of the WIOD Release 2016 (Dietzenbacher et al., 2013)を採用した。2014年はWIODデータベースがカバーしている最新年であり、日本のみならず中国の主要貿易国をカバーしている。第2は中国を含む、世界のアスベストフローに注目した多地域間産業連関表を鉱物アスベストとアスベスト含有製品について拡張した産業連関表 Extend MRIOA with asbestosの推計である。WIOT 2014にはカザフスタンを始めとするアスベストの主要生産国が含まれていないため、GTAP(Narayanan et al., 2012)とICIO(OECD-WTO, 2013)を比較検討の上、ICIO表をベース表とした。その結果、健康リスクの高いアスベストがサプライチェーンを通じ、日本を含む既にアスベストが禁止された国々の消費により、中国における生産量54.8万トンの2割が誘発されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に既に述べた通り、中国の環境負荷について拡張した多地域多国間廃棄物産業連関表としてCJWIO 2014とアスベストについて拡張したExtend MRIOA with asbestosを推計した。CJWIO 2014の推計は、申請当初の研究計画では平成30年度までに取り組む予定であった。研究の遅れについては次の三点が原因として挙げられる。第一に、研究を進める中で、中国における鉱物アスベストの採掘およびアスベスト製品の生産と輸出の問題が浮かび上がったことによる。この問題について明らかにするためには当初予定のCJWIO 2014のみならず、Extend MRIOA with asbestosの推計も必要となり、作業量が倍増した。第二に、CJWIO 2014の推計に要する作業量が予想より大幅に必要となったことである。第三に、COVID-19の影響により、急遽オンライン授業を実施することとなり、授業準備に大きく時間を取られたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の取り組みとしては大きく二つの方向に進めていきたい。当初の研究計画に記載された日本を含む中国の主要貿易国の消費需要が、中国における環境負荷の増大にどのような影響を与えているかについては、CJWIOA 2014の推計により、分析を行い口頭発表・論文投稿を含めた成果発表を行っていく予定である。また、CJWIOA 2014の中国の産業廃棄物は中国の統計に基づいて推計したために実質一つの分類でしか推計できていない。それを日本の産業廃棄物分類レベル並みに詳細に分類して推計し、アップグレードしたいと考えている。第二の取り組みとしては、中国を含むアスベスト製品の世界フローの推計である。2020年度に推計したExtend MRIOA with asbestosではアスベスト採掘部門についての拡張を推計しているが、アスベスト製品部門についての拡張はまだ取り組み中である。2021年度にはこの点も進めた上で、積極的に口頭発表・論文投稿を含めた成果発表を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により参加を予定していた国内学会、国際学会がオンライン開催となった。「現在までの進捗状況」で述べた理由により、成果発表が遅れてしまった。
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