研究課題/領域番号 |
16K03651
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
遠藤 正寛 慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (80281872)
|
研究分担者 |
風神 佐知子 慶應義塾大学, 商学部(三田), 准教授 (00510851)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 国際貿易 / 雇用 |
研究実績の概要 |
本研究課題のうち、平成30年度は、日本の対外貿易が国内製造業の雇用に与える影響を分析した。具体的には、「事業所・企業統計調査」と「経済センサス」のデータから1996年から2016年までの事業所レベルの雇用のパネルデータを構築し、それを用いて日本のアジアからの輸入と世界への輸出が雇用の創出や消失にどの程度影響を与えたかを推計した。本研究の新しい試みの一つとして、Amiti and Weinstein (2018, Journal of Political Economy) の方法を援用して、雇用の変化を産業ショック(産業固有の要因)と地域ショック(地域固有の要因)に分解したことがある。 主な分析結果は以下のとおりである。①貿易は産業ショックを通じて製造業の雇用を変化させる。地域ショックを通じた影響は統計的に有意ではない。②アジアからの輸入は、大規模事業所(雇用者数が100人以上)での雇用の消失の拡大や閉鎖する大規模事業所の増加を通じて、雇用を減少させる。③世界への輸出は、中・小規模事業所(雇用者数が100人未満)での雇用の消失の減少や閉鎖する中・小規模事業所の減少を通じて、雇用を拡大させる。④分析期間中の雇用の総変化(創出された雇用と消失した雇用の合計)のうち、貿易によるものは約4%と推計される。 4つの主要な分析結果の意義は、以下のとおりである。①雇用変化に地域ショックも含めている先行研究では、貿易の雇用への影響が過大に推計されている恐れがある。②大規模事業所は輸入ショックにより柔軟に対応する。③輸出は主に大規模事業所によって行われるが、中・小規模事業所もその間接効果を享受している。輸出の拡大によって中小事業所の雇用減少が抑えられる。④雇用のダイナミズムにおける貿易の影響は限定的である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、本研究課題の研究計画の中で重要なプロジェクトである貿易の雇用への影響について、分析をまとめることができた。研究計画調書では主に企業・労働者接合データを用いた分析を提示していたが、貿易の雇用への影響については、事業所パネルデータの方がよりふさわしいことがわかり、平成30年度はこのデータも構築した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の研究計画で挙げたプロジェクトのうち、平成31年度は、ある企業の国際取引の拡大がその企業の国内取引相手の雇用や賃金に与える影響の分析に取り組む。また、本研究課題に沿って行ってきたこれまでの研究成果がまだ英文学術雑誌に掲載されていないので、雑誌への投稿や論文改訂を積極的に行い、研究成果を早急に学術雑誌で公開できるよう努力する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成31年度に英文校閲費や海外旅費で比較的多くの支出が予想されたので、そのための予算を確保した。 (使用計画)平成31年度は、英文校閲費で200,000円、海外旅費で400,000円の支出を予定している。
|