研究実績の概要 |
単著論文 "The impact of firms' international trade on domestic suppliers: The case of Japan" (Masahiro Endoh, Journal of The Japanese and International Economies, Vol. 63, 2022) を執筆、刊行した。この論文では、企業が外国と取引することから受ける影響が、国内の売り手・買い手ネットワークを通じて、直接には外国と取引をしていない国内他社にも及ぶかどうかを検討した。そして、2011年から2015年のデータを用いて、ある日本の製造業企業が輸出あるいは輸入を増やすと、その企業に販売している他の国内企業の廃業確率が減少することを示した。ほとんどの日本企業は外国と直接取引を行っていないが、この結果は、外国と直接取引をしているごく少数の日本企業における輸出・輸入の拡大が、間接的に他の国内企業に良い影響を及ぼすこと、つまり、貿易の利益が日本企業の大部分を占める非国際化企業にも均霑することを示している。興味深いことに、輸出・輸入の縮小については、逆の効果、すなわち国内取引相手の廃業確率を高めるという結果は得られなかった。ただ、外国と直接取引をしている企業が卸売・小売業である場合は、このような間接効果は観察できなかった。また、取引相手の非国際化企業の売上や従業員数といった側面でも、間接的な影響は観察できなかった。この論文は、本研究課題の研究目的のうち、日本企業の国際取引が間接的に取引先に及ぼす影響を明らかにしたものである。
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